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花よし味よしのレンコン

蓮の華(ハスのはな)は、
清らかさの象徴として称えられる美しい花です。

沼地に咲き、
「蓮は泥より出でて泥に染まらず」という
日本人にも馴染みの深い喩え(たとえ)がある
花でもあります。

もちろんご存知のように、
蓮の根つまり蓮根(レンコン)は、
秋から冬への美味しい食材としての方が、
馴染み深いかもしれません。

おせち料理に欠かせないレンコンは、
輪切りにすると、
丸い空洞から向こうが良く見えるため、
「見通しが良い」という縁起ぎの食材でもあります。

食用として知られているのは、
地下茎ですが、
東南アジアでは、
ハスの実もよく食べられています。

このレンコンには栄養素も多く含まれ、
根菜類の中でもっとも豊富なビタミンCをはじめ、
ビタミンB1、B12、カリウム、
レンコンの粘りのもとであるムチンや、
食物繊維も含まれています。

レンコンを切った時に糸をひくムチンは、
胃壁を保護し、
胃炎や胃潰瘍の予防に一役買ってくれます。

これは納豆やオクラ、里芋などに含まれる成分と同じで、
タンパク質や脂肪の消化を促進します。

中国から仏教とともに伝来し、
5世紀ごろ日本に入ってきたレンコンは、
その後全国に広まり、大切に栽培されています。

昔からレンコンは、
二日酔い、鼻炎や鼻づまり、下痢止め、
シミ、ソバカスに効果があると言われ、
今でも免疫力を高める健康に良い野菜として
食べられています。

年中出荷されているレンコンですが、
秋に獲れるレンコンは歯ざわりが柔らかくあっさりとし、
晩秋から冬のものは、
グッと粘りが出て甘味もまします。

様々な料理法で美味しく食べられる秋の根菜と言えます。

また、
ラーメンなどのスープを飲む時に使うレンゲですが、
サジの形が、散ったハスの花びら一片に似ていることから、
「散り蓮華(ちりれんげ)」と呼ばれるようになり、
今ではそれが省略され、レンゲとなりました。

※レンコン調理のポイント
ビタミンC、ムチンは水に溶けやすいので、
水にさらす、下ゆでなどのアク取り作業は、控えめにします。


タンパク質の巡りあい

すべての人は、
健康であることを望んでいると思いますが、
健康であるためにはどのようなことに気をつけて
タンパク質を摂ればよいのかと問われると、
なかなか的確に答えることができる人は
多くはないかもしれません。

それは、家族構成や食べ物の好み、
地方独自の味付けなど、
その人が暮らす環境が様々だからです。

したがって、
個人にとって適切なタンパク質の量を
標準化するのは、
たいへん難しいことです。

植物性のタンパク質を多く含んでいる豆腐や納豆、
あるいは牛、豚、鳥など肉を多く食べる人は、
一日に摂取するべきタンパク質の必要量を
満たすことは容易で、
タンパク質の欠乏という問題とはあまり縁がないでしょう。

一方、タンパク質が不足している食生活を送っている人は、
食事で摂るタンパク質の量に注意しないと
問題を招くことになります。

というのも、タンパク質は、細胞膜をつくり、
細胞骨格を形成し、体の骨格、筋肉、皮膚を
構成しています。

タンパク質を構成しているアミノ酸は、
タンパク質合成の素材であるとともに、
神経伝達物質やビタミン、
さらに、酸化されることで
エネルギー源としても利用されいます。

植物性タンパク質を含む豆腐を食べても、
そのまま大豆のタンパク質が
人のタンパク質として
体に取り込まれるわけではありません。

タンパク質は、
いくつかのアミノ酸の集合体です。

大豆のタンパク質は、
アデニンやグアニン、チミンなどのアミノ酸に分解され、
体内で再びタンパク質として構成された後、
筋肉や神経伝達物質、ビタミンなどとして利用されます。

しかしそこに留まるわけではなく、
ふたたび分解されてアミノ酸となり、
尿素などに合成されて体外に失われます。

タンパク質も他の体内物質と同様に
合成と分解を繰り返します。

したがってまとめて摂るのではなく、
タンパク質を含む食品を毎日食べることが、
大切だということになります。


お米の歴史を噛みしめる秋

稲刈りが終わった田んぼは、
秋から冬へと遷る風景です。

私たちにとって、
たいへん馴染みのあるこの景色は、
日本の原風景ともといえます。

今では、北は北海道から南は沖縄まで、
稲作は普及していますが、
かつては一部の地域でしか栽培できない
貴重な食料でした。

日本におけるお米づくりの歴史は古く、
少なくとも3000年以上前の縄文時代から
稲作は始まっています。

まず、地理的に大陸に一番近かった九州に
稲作の技術が伝わり、
日本のお米づくりは、
九州地方から東へと広がります。

驚くべきことに2200~2300年前には
青森県あたりまで稲作は広がっています。

稲作が広く普及した理由は、
原産地である東南アジアのように、
雨が多く降る季節と
雨が少なく暑い季節が
稲作に適していたということが挙げられます。

また、お米は食味がよく、
長期間の保存が可能であったことも
普及した理由の一つといえます。

主食になるにふさわしい
食料だったのです。

お米は、日本人にとって
単なる食物という枠を超え、
日々の生活様式や風習にも
深く関わる存在となっていきました。

毎年11月23日に、
天皇が秋に収穫した穀物を神様に祭る
行われる新嘗祭(にいなめさい)は、
飛鳥時代に始まったといわれています。

平安時代から伝わる芸能の田楽も、
田植えの前に豊作を祈願して行う
「田遊び」から発達したものといわれています。

現在では
田んぼなど殆どない東京都板橋区にも、
重要無形民俗文化財に指定される田楽が
存在します。

また、名勝負を楽しませてくれる相撲(すもう)も、
豊作の祈願する祭りでした。

相撲の立合いで見られる四股(しこ)には、
大地を力強く踏みしめ、
災いを追い払うという意味があります。

春夏秋冬の中でも、
一番お米が美味しいこの時期には、
日本で暮らす有り難さを
多くの人が感じているでしょう。


プロセスチーズとナチュラルチーズの違いとは

アミノ酸やビタミンB2などを多く含むチーズは、
日々の健康を後押ししてくれる手頃な食材です。

日本でチーズといえば、
ほとんどがプロセスチーズです。

プロセスチーズは、
ナチュラルチーズを細かく砕いて、
高温でドロドロに溶かして殺菌し、
冷ましたチーズのことです。

スライスチーズや6Pチーズ用などの
型に詰めてパッケージングするため、
保存がしやすく携帯にも便利です。

メーカーによっては、
トマトやこしょうのエッセンスをブレンドしたり、
干しぶどうやナッツを加え、
様々な味にアレンジした商品を販売しています。

一方、ヨーロッパのチーズは、
ナチュラルチーズがほとんどです。

牛や山羊から搾った原料乳の水分を抜いて型に入れ、
乳酸菌やカビ菌で熟成させて、
加熱処理することなく、
消費者に提供します。

製法や熟成期間によって、
形や色が違うチーズとなるため、
その数は1000種類をこえると言われています。

ヨーロッパ各地の青空マーケットを覗くと、
大小様々なチーズが並べられている屋台が出て、
その土地柄、お国柄の味を楽しむことができます。

ナチュラルチーズは、
その種類の多さもさることながら、
チーズが熟成する過程も楽しめます。

しかし、
保存方法や扱い方には注意が必要です。

菌が生きているため、
冷蔵庫の中で保存していても、
熟成が進みます。

うっかり室内に置いておくと、
カマンベールチーズのようにドロドロになったり、
表面に乳脂が浮き出てくるものもあります。

プロセスチーズとナチュラルチーズに違いはあるものの、
骨粗しょう症の予防に不可欠なカルシウムを効果的に
摂ることができる食材です。

カルシウムが多いといわれる小魚では、
含有カルシウムのおよそ30%を消化吸収できますが、
チーズの場合、
50~60%を体内に吸収することが出来ます。


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