1 / 212

鼻水と涙の関係

11月になると、しばらくお蔵入りしていた石油ストーブを出して、
本格的な寒さがやって来る前に試運転を…、と考えている方も少なくないでしょう。

何気なく外に出てみると、
思いのほか空気が冷たくて、
くしゃみをしてしまうことがあります。

くしゃみをすると鼻水も一緒に出てしまうことがありますが、
これは鼻水というよりは、涙の一部なのです。

悲しい時の涙や嬉し涙、悔し涙など、
涙がでるときにセットのように鼻水が出て、
ティッシュで鼻をかみながら…、
ということを経験された方は多いはずです。

もともと涙は、感情が高まった時だけに出るのではありません。
普段から涙は、上瞼にある涙腺から少しづつではありますが
常に流れ出ています。

眼球につくホコリなどを涙で洗い流し、
角膜などが傷つかないように保護しているのです。

成人の場合、一日に0.5~1mlほどの涙を流しています。

普段ほとんどの涙は、眼球の表面から蒸発し、
残りについては、鼻涙腺という細い管を通じ、
目から鼻へと流れています。

流れる量はわずかであるため、
ほとんど気づくことはありません。

しかし、感情が高ぶることで自律神経が刺激され、
涙腺から大量の涙が放出されると、
目からばかりでなく鼻涙腺を通じて
涙は鼻からもあふれだすことになります。

したがって、泣いた時に出る鼻水は、
風邪をひいた時に出る鼻水とは出どころが違うということになります。

泣いた時に出る鼻水が、サラサラとしているのは、
このような理由があるためです。


臭う汗の起源

気温が高い時、ヒトの体は汗をかくことで体温を調節しますが、
体臭が気になる女性にとっては、汗をかくことは、
やっかいな問題です。

個人差はありますが、
ヒトは、1日に約1リットルの水分を
汗として体の外に出しています。

特に真夏では室内にいても約3リットル、
日差しが厳しい日中に外を歩くと
1時間で、0.5リットルの汗をかくこともあります。

汗の原料は血液です。

脳に体温が上昇したという情報を受けると、
血液中の水分が汗腺に取り込まれ、
汗を表皮表面に出します。

汗は、体の表面全体を覆っている
エクリン腺という汗腺で造られます。

またアポクリン腺という汗腺からも汗は出されています。

ただし、アポクリン腺は、
思春期にならないと分泌が始まりません。

アポクリン腺は、
脇の下、乳首の廻り、外陰部、肛門の周囲などに分布し、
体温とは関係なく働いています。

体臭の元となる汗は、アポクリン腺汗からでる汗です。

元来、汗に臭いはないのですが、
アポクリン腺から一緒にでる脂肪やタンパク質が
皮膚表面の常在菌によって分解されると
腐敗臭の元、つまり体臭になります。

女性の場合、アポクリン腺から分泌される臭い物質は
性周期と関係しています。

人間の祖先は、
アポクリン腺から分泌される臭い物質によって、
交尾の時期を見極める信号とし
て使っていたと推測できます。

現代においても、
排卵期や生理直前に
体臭が強くなると感じる女性は、
少なくありません。

更年期を過ぎると、
体臭の悩みが減少する傾向にあるのも、
性ホルモンと体臭の関連性を示唆しています。

現在のヒトでは繁殖のために備わった
臭いを発する機能は、
退化しているのですが、
やっかいなことに今でも影響を受けています。


白い筋肉赤い筋肉

プロの運動選手は、
より高いパフォーマンスを発揮できるように、
その競技に適するトレーニングを重ねます。

走ることが専門の陸上競技の場合、
100mや200mを専門とする短距離選手は、
数十秒の間に爆発的な走力を出せるような練習を重ねますし、
マラソン競技に出場する長距離選手は、
2時間を超えてもスピードが落ちないような持久力を
維持できるような練習を重ねます。

その結果、それぞれの種目に長けた筋肉が発達します。

体型を見れば明らかです。

短距離選手の場合、
胸が厚く、がっちりした太ももや分厚い胸板が特徴的です。

一方、長距離選手の場合は、同じ筋肉質ではありますが、
短距離選手と比較すると、スラリとした姿が特徴的です。

これは瞬発力を生み出す際に力を発揮する白筋(速筋)と
持久力に優れた運動をするのに向いている赤筋(遅筋)の
いずれを強化したかの差によるものです。

白筋の場合、
すぐに体内の糖をエネルギーとして使用し、
無酸素で瞬発力を生み出します。

ただし蓄えられている糖質がなくなれば、
燃料不足の状態となり出力がグッと落ちてしまいます。

一方、赤筋の場合は、
エネルギー源は体に蓄えられている糖と脂肪で、
酸素を使用しながら動きます。

体内に蓄えられている糖が無くなっても、
脂肪を分解しながらエネルギーとして使うため、
長時間その能力を維持することができます。

ダイエットのための有酸素運動(エアロビクス)では、
体内の脂肪を消費するために、赤筋の特徴を利用します。

白筋と赤筋の色の違いは、
酸素分子を代謝に必要な時まで貯蔵する
ミオグロビンという色素タンパク質の量の違いです。

イルカやクジラなどの水生哺乳類は、
長い時間水中に留まるため、
大量の酸素を貯蔵しなければならず、
ミオグロビンが大量に含まれているため
肉の色は陸上の哺乳類よりも赤いという特徴があります。


痛みを予測することで痛みを治す

ぎっくり腰になったという人は、少なくありません。

一度ぎっくり腰の激痛を経験すると、
そのイメージが記憶に深く刻まれ、
前に屈んだ瞬間に
「あ、ぎっくり腰になる」という思いが脳裏に浮かび、
痛さに備えて体を硬く身構えてしまうことで、
逆にぎっくり腰が再発するということが少なくありません。

このようなイメージは「自動思考」と呼ばれ、
その記憶を自分自身で修正することは
難しいといわれています。

また長らく腰痛を患っている人は、
ちょっとした動作のたびに「また痛くなる」とイメージし、
考えないようにしようと思っても、
そう考えずにはいられません。

このようなストレスが関係する腰痛には、
認知行動療法が効果的だと言われています。

認知行動療法とは、
患者の「現実の受け取り方や考え方」に基づく
感情や行動に注目し、
その記憶を変えることで疾患を治す療法のことです。

「また痛くなる」という記憶に囚われて、
痛みに備えて身構えてしまう自動思考を、
日常の姿勢を改め、
過去の記憶と現実の行動の食い違いを利用し、
腰を痛めそうな姿勢の記憶を変更することで、
「また痛くなる」と考えから開放され、
最終的には、多少の動きでは、
痛みは無視することができるようになります。

認知行動療法は主に精神科で行われますが、
筋肉や骨格の問題を解決する整形外科と連携して治療する
リエゾン療法(連携療法)もあります。

リエゾン療法とは、
整形外科、精神科や心療内科など、
複数の医師が連携(リエゾン)して治療を行ない、
治療を心体の両面から行う方法です。

運動療法認知行動療法、薬物療法などを併せて行います。


ストレスと腰痛

二本足歩行の人間にとって、
腰の痛みとは残念ながら
宿命的な付き合いがあるといえます。

もともと痛みは、
生物にとって必要な情報です。

というのも重いものを持って、
筋肉に感じる負荷の大きさや
関節に加わる外からの圧力に対する
過度の負荷によって、
耐えられない限界点を
痛みという信号で知らせてくれるわけです。

全く痛みを感じないほうが
正常ではないということになります。

その筋力や関節の限界を知っているからこそ、
心身ともに健康でいられるわけです。

したがって、腰痛があるということは、
ある意味正常な体であるという証でもあります。

とは言っても、腰痛によって日常生活に
支障をきたしているのであれば、
少なくとも不自由なく過ごせるレベルまで
痛みを軽減することは、必要です。

一般的に、腰痛や発熱の治療には、
非ステロイド性抗炎症薬が使われます。

非ステロイド性抗炎症薬とは、
抗炎症作用、鎮痛作用、解熱作用の効果がある
薬剤の総称です。※1

しかし、ストレスによる腰痛の場合には、
違った薬を処方されることもあります。

それは、抗うつ薬や抗てんかん薬です。

うつ病の治療に使われ薬が、
腰痛の治療に使われることは、
以外と思われるかもしれませんが、
抗うつ薬には、
セロトニンやノルアドレナリンといった
神経伝達物質が細胞へ取り込まれることを阻害して、
痛みを感じにくくすることで、
鎮痛効果がみられたり、
抗てんかん薬によって、
神経細胞にある神経伝達物質の受容体と呼ばれる部位の
過剰な興奮を抑制することで、
鎮痛効果が期待できます。

ストレス性の腰痛には、
痛みについての誤った認識を修正する「認知療法」と、
痛みと行動の関係を知り、
日常生活でできることを増やしていく「行動療法」を
組み合わせた「認知行動療法」という、
心と体の両面から治療を行う方法があります。

※1:独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センターによる定義

痛みを予測することで痛みを治す–へ続く


1 / 212