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ローヤルゼリーとローマ法王

養蜂によって得られるハチミツやローヤルゼリーは、
健康食品としてだけでなく、化粧品などの美容分野でも
多角的に応用されるようになっています。

ミツバチとの関わりの歴史は大変古く、
紀元前6000年ごろの人間の住居跡として有名な、
スペイン東部のラ・アラーニャ洞窟の内部に描かれたの壁画に、
ミツバチが飛んでいる様子とハチミツを採る人が描かれていることからも伺えます。

古代ギリシアの哲学者のアリストテレスは、
彼の著書である「動物誌」の中で、ローヤルゼリーを
ハチミツとは違う『濃厚な蜂蜜に似た淡黄色の柔らかいもの』と表現し、
それが固まると女王蜂になると考えていました。

実際には、
その柔らかいものとして書かれていた
ローヤルゼリーの固まりの中に産み付けられた卵が孵化し、
ローヤルゼリーを食べて女王蜂になります。

その淡黄色の固まりが「ローヤルゼリー」と呼ばれるようになったのは、
今から200年ほど前に、フランソワ・ユベールが「蜜蜂の新観察」の中で、
「ゼリー・ロワイヤル」と記したのが最初だと言われています。

その後、1950年代になるとフランスでは、
ローヤルゼリーが保健省の認可を得て、
病院で薬品として処方され始めます。

ちょうどそのころ、ローマ・カトリック教会の頂点に立つ
ローマ法王(ピオ12世)が危篤状態に陥いりますが、
主治医の判断でローヤルゼリーを投与したところ、
病状が完全に改善しました。

この奇跡的な回復劇は、ドイツの国際学会で発表され、
さらに1958年にローマで開催された国際養蜂会議でローマ法王自ら、
「私はローヤルゼリーのおかげで命が救われた」と演説します。

この出来事は、ローヤルゼリーが世界に広く知られるキッカケになりました。

やまだ農園本舗のローヤルゼリーDX90000ロイヤルプロポリススーパー5000DXにも
健康・美容成分を含む女王蜂の特別食が高配合されています。


ハチミツの危機上陸

ミツバチが日本の歴史に初めて登場したのは、
西暦643年(皇極2年)「日本書紀」です。

奈良時代には、天平11年(739)に渤海国(※1)から
貴重な薬として献上されたと記されています。

その後、本格的に養蜂が行われるようになったのは
江戸時代からです。

この頃のミツバチは、日本の古来種であるニホンミツバチでした。

明治維新後、ハチミツの収穫量の向上を目的として、
アメリカからイタリア国種のミツバチが輸入されます。

第二次世界大戦の混乱や貿易の自由化などにより
現在の養蜂を取り巻く環境は厳しくなっていますが、
それでもミツバチを飼育している農家の戸数は、
2014年(平成26年)時点で、9,306戸となっています。

ミツバチの仕事は、
花の蜜を集めるだけではありません。

生食の消費量が世界一のイチゴ栽培をはじめ、
農産物の花粉交配でのミツバチの重要性は増し、
受粉が農産物生産の35%を支えています。

家畜としてのミツバチの総産出額は 3,500億円にのぼり、
98%が花粉媒介用のミツバチの働きということになっています。(※2)

ところが、この可愛い働き者であるミツバチを激減させる敵が、
大陸から上陸したというニュースが報道されました。

その恐ろしい敵とは、外来種であるツマアカスズメバチです。

このスズメバチは、攻撃性が高く、
一度獲物・敵と定めた相手に対しては、
執拗に攻撃をくり返す習性があります。

ツマアカスズメバチが増加すると、
エサとして好んで捕獲するセイヨウミツバチが、
格好の標的となります。

ミツバチに受粉の手伝いをしてもらっている
野菜のかぼちゃ、ナス、きゅうり、トマト、ピーマン、ズッキーニ、
フルーツのいちご、すいか、メロン、なしなどの
生産に深刻な被害を受けることが心配されています。

このハチは、日本だけではなくて、
中国や台湾、東南アジア諸国で被害を与えているため、
世界規模の対策が検討されています。

※1 渤海国:満洲から朝鮮半島北部、現ロシアの沿海地方にかけて、
かつて存在した国家
※2 ハチミツ生産について:一般社団法人 日本養蜂協会ホームページより


お気楽ニホンミツバチのヒミツとは?

明治10年に輸入されたセイヨウミツバチ(A. mellifera ligustica:イタリア亜種)は、
養蜂用ミツバチとして、国内で広く飼育されています。

もともと日本には在来種のニホンミツバチがいました。

江戸時代には紀州藩などで、ハチミツを採取するために養蜂が行われていましたが、
ストレスを受けると巣箱を放棄してよそへ引っ越してしまう、
蜜を集める量が少ないという欠点がありました。

そこで、繁殖能力が高く、比較的攻撃しないセイヨウミツバチが、
輸入されハチミツ生産の主流となりました。

セイヨウミツバチの仕事は、花の蜜を集めるだけではありません。

イチゴやメロンなど果菜類栽培の花粉交配という仕事も担っています。

しかし、2006年に米国で報告された、働きバチが大量に失跡する
原因不明の蜂群崩壊症候群(CCD)が、世界規模の広がりを見せ、
ミツバチの不足によって日本への輸入が止まった事態に陥っています。

そこで野山の片隅に追いやられてしまっていたニホンミツバチが、
改めて見直されています。

というものニホンミツバチは、寒さに強く、
ミツバチに付くダニを自ら撃退し、
セイヨウミツバチに深刻な被害をもたらすふそ病や、チョーク病といった
恐ろしい病気にかかりません。

またミツバチの天敵であるスズメバチを自分たちの体温で蒸し焼きにして
撃退する習性も備えています。

日本の風土に適応し人に見捨てられても、
野山でたくましく生きのびるニホンミツバチは、
遺伝子の資源としても注目を浴びています。


日本にいる2種類のミツバチ

日本には、セイヨウミツバチとニホンミツバチが生息しています。

同じミツバチですから、両方のミツバチの交配種(セイヨウミツバチと
ニホンミツバチが交尾した結果生まれる雑種)も存在しているように考えらますが、
実際には存在しません。

仮説として、嬢王蜂が交配するために巣の外に出て行なう
交尾飛行(ミツバチの交尾は空中で行われます。)の時間帯がズレているため、
交雑( 遺伝子組成の異なる系統間の交配によって、両方の系統の特徴を持つ雑種ができること。)
が起こらないと考えられています。

その根拠として、セイヨウミツバチの交尾飛行は13:00-13:30であり、
ニホンミツバチの交尾飛行は15:00-15:30ということで、
2時間ズレていることが示されています。

しかし現実としては、二つの種類の交尾は起きていると考えるのが自然です。

そこで玉川大学ミツバチ科学研究センターが行なった2種のミツバチの交尾の実験によると、
交尾はするものの、女王蜂が産んだ卵は孵化しないことが解りました。
(※1)

さてセイヨウミツバチは、日本になぜ棲んでいるのでしょう?

日本には、元来ニホンミツバチが生息していたのですが、
わざわざ明治10年に、セイヨウミツバチが輸入されました。

というのも、セイヨウミツバチは蜜を集める能力が高く(ニホンミツバチの4~5倍)、
花の種類ごとの蜜をとることができ、近年では副産物としてプロポリスも収穫できるため
現在飼育されているミツバチは、ほとんどセイヨウミツバチです。

かつては養蜂家もニホンミツバチを飼育していましたが、
強いストレスがかかると、巣を投げ出して逃げてしまうという欠点があり、
蜂蜜を集める能率も優れていませんでした。

なにか働き者でない、のんきなニホンミツバチですが、最近改めて注目されているのです。

次回は、【お気楽ニホンミツバチのヒミツとは?】

-続く-

※1:「ニホンミツバチの社会をさぐる」 玉川大学出版部 吉田忠晴著 ISBN 9784472302862)


ミツバチを探偵する-その弐-

人間とミツバチの付き合いは大変古く、スペインのアラニア洞窟で
発見された新石器時代と推定される岩壁彫刻には、
梯子を使って洞穴にある巣からハチミツを採集する人の様子が
描かれています。

またギリシア神話に登場するアリスタイオスは、
養蜂の神として知られています。

日本におけるミツバチを利用したハチミツ採取の歴史も古く、
平安時代後期に編纂された今鏡には、藤原宗輔(むねすけ)という
蜂飼大臣(はちかいのおとど)についての記述が残っています。

さて、沖縄で飼育されているミツバチの話に戻りましょう。

沖縄産のプロポリスの起源植物として、ミツバチが選んだ植物は、
オオパギ(学名:Macaranga tanarius)でした。(※1)

奄美大島より南で見られる日本名:オオパギ(大葉木)は、
沖縄県ではいたるところに見られる植物で、
名前の通り大きな葉を持つ植物です。

沖縄産プロポリスの起源植物であるオオバギを分析した結果、オオバギの葉には、
高い抗酸化と抗菌活性を持つプレニルフラボノイドが含まれていることが
明らかになりました。(※2)

それ以前は、まったく注目されていなかった植物であるオオパギは、
ミツバチの抗菌成分を持つ植物を探偵する能力のおかげで、
人間が実用的に利用できる可能性を持つ植物として
認められるようになりました。

今後オオパギに含まれる機能性成分の有効利用が、期待されています。

※1:沖縄産プロポリスの起源植物オオバギの発見と素材化に向けた研究
(2010年12月 ISSN国際標準逐次刊行物番号 03882217)
※2:フラボノイドとは植物性食品にみられる代表的なポリフェノールで、
 プレニルフラボノイドには、がん細胞増殖抑制、抗酸化活性、抗菌活性などを
 有することが明らかになっています。


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