2 / 212

バラと人とミツバチ

バラ栽培の歴史は古く、
紀元前13世紀前半にはエジプトで観賞用の花として
栽培が始められています。

世紀の美女クレオパトラも、
バラをこよなく愛した人物として知られていますし、
古代ローマにおいても宗教的儀式や祭りで使われる
神聖な花であったと伝えられています。

ドイツ語でバラ園を表す「rosarium:ローザリウム」の語源は、
古代ローマ時代のバラ園の呼び名からきています。

このような歴史を経て品種改良されたバラは、
花屋の店先で美しさ競っていますが、意外なことに
芳しい香りを放つ観賞用バラには、ほとんど蜜がありません。

蜜があるのは、日本古来の原種である野バラ(Japanese rose)や
ダマスクローズのようなオールドローズ種です。

そこで、今回は、ダマスクローズと人とミツバチの
関わりについてご紹介しましょう。

バルカン山脈の南側に位置するブルガリアのカザンラク一帯には、
バラの谷とよばれるダマスクローズの一大生産地があります。
ここで育てられているダマスクローズの栽培規模は広大で、
谷沿いに広がるバラ農園の全長は150kmにも及びます。

ダマスクローズは、観賞用ではありませんし、
ハチミツ用に栽培されているバラでもありません。
香油としてローズオイルを採取するために育てられています。
ダマスクローズの花は5月~6月にかけて咲き、
この時期に行われるバラ摘み作業は早朝4時から始まります。

気温が上昇するとバラの香り成分飛散してしまうので、
22℃になる10時頃までには収穫を終了しなければなりません。

バラの摘み作業が終る頃、気温が上がってくると
ミツバチは花の蜜を集め始めますが、
ダマスクローズの花は既に摘み取られた後です。
花のないバラ園をさ迷うかわいそうなミツバチを想像してしまいますが、
農民はミツバチ用に一部の花を摘まずに残しておきます。
人間とミツハチが共に生きるためのちょっとした気配りです。


様々な花の蜜

プロポリスを生み出すミツバチは、
花の季節に合わせて日本を移動する旅人と言えます。

ミツバチは、花の種類を選びながら蜜を集めることはしませんが、
花の旬の時期であれば、必然的に一種類の花の蜜が揃います。

日本列島は南北に長い国土ですから、
春の花の代表である菜の花にしても、
九州と北海道では咲く時期に、二ヶ月ほども開きがあります。
そのため、養蜂家は、花の旬を見極めて全国を旅し、蜂蜜を集めます。

四季折々に咲く花は、その花固有の蜜を持っていて、
蜂蜜の香りや色、そして風味は様々です。

さくらの蜂蜜は、まさしく黄金色で雑味のない甘さが特徴です。
一方、さくらとは親戚筋にあたるさくらんぼの蜂蜜は、
やや暗い赤褐色で酸味があります。
個性的といえば蕎麦の蜂蜜でしょう。
限りなく黒に近い褐色の蜂蜜は、匂いにも味にもクセがあります。
しかし、その成分には鉄分やカリウムが豊富に含まれています。

日本で集められる花の種類は数十種類に及びます。
果樹園のナシ、りんご、みかん、栗、ブルーベリー。
ビニールハウスのメロン、イチゴ。
野の花のたんぽぽ、野いちご、あざみ。
畑に咲き乱れるレンゲ、菜の花。
野山の木であるどんぐり、もちの木、ぐみ、ハゼなど、
働き者のミツバチは、様々な花を訪れ、
それらの花の蜜を集めているのです。

ミツバチが集めてくれる蜂蜜の様々な味と香りは、
私達に風味を味わう楽しみを与えてくれてます。
プロポリスやミツロウ、そして蜂蜜と、
ミツバチは人にとって大切な存在のようですね。


ミツバチの冬休み

明けましておめでとうございます。
今年もえみの和健康・美容コラムをご覧くださいまして
どうもありがとうございます。
スタッフ一同、皆様のご健康を心よりお祈りしています。

さて、子どもたちにとって夢のような冬休みもそろそろ終わりですね。
どのような冬休みだったでしょうか。
子どもたちと同様に、実は、ミツバチも冬休みをしていました。
さて? どのように過ごしていたのでしょうか…
今日は、ミツバチの冬休みについてご紹介しましょう。

ミツバチは、様々な種類の花の蜜を集めてくれる働き者です。
春を呼んでくれる「梅」、春の歓迎門とも言える「桜」、
初夏にさわやかな香りを放つ「柑橘類」、
秋の「コスモス」など四季に応じて、
小さな花にわずかしかない花の蜜を集めてくれます。
そればかりでなく、ビニールハウス栽培のイチゴのように果樹の受粉でも
大切な役割を担ってくれています。

そして、ミツバチといえば、
私達にたくさんの恩恵を与えてくれるありがたい存在ですね。
はちみつの他にも女王蜂だけが食べることができ、
栄養食の王様的存在でもあるローヤルゼリーや、
人の体の免疫力をアップしてくれるプロポリス、
更にはミツバチのお家の材料となっているミツロウで、
石鹸やろうそくといった生活用品まで人の暮らしを支えてくれています。

ところで、花のある季節は休む間もなく働いているミツバチですが、
花のない冬をどのように過ごしているのでしょうか?
寒さのために死んでしまうのでしょうか?

いえいえ、がんばり屋さんのミツバチは、昆虫としては珍しく、皆で協力して越冬するのです。
ご存じの方も多いと思いますが、飼育されているミツバチは、
人間が作った木製の箱に巣を作り、その箱の中で新しい次の子孫を育てます。
寒さが厳しい冬には、仮死状態でもなく、冬眠することもなく、
巣の中で起きたまま寒さをしのぎます。
ミツバチ達は、巣の中心部に集まり、蜂球と言われる状態になり、
外気温が零下に下がる厳冬でも巣の中の温度は30~35℃程度に保たれるため、
見事に越冬できるのです。
蜜の少ない冬の時期は、夏場に集めていた花の蜜や花粉を食べて
静かに冬を過ごします。
いわゆるミツバチの冬休みと言っていいかもしれません。
ゆっくり休んで、花の咲き乱れる春の夢でも見ているのではないでしょうか…。


2 / 212