日光とビタミンDの深い関係

野菜や果物に多く含まれるビタミンCは、
美容と健康のためには切っても切れない関係です。

たまごやバターなどの乳製品に多く含まれるビタミンAも、
過不足なく摂らなければなりません。

老化防止に関わるビタミンEなど、
食べ物から体の中に取り入れるビタミンは多くあります。

その中で若干様子が違うビタミンが、ビタミンDです。

ビタミンDは、カルシウムやリンを体内に吸収し、
濃度の調整や、骨の形成を促す役割を果します。

ビタミンDは、野菜ではきのこ類にわずかに含まれていますが、
果物にはほとんど含まれていません。

あんこうの肝やすじこには含まれていますが、
これらの食材を欠かさず毎日食べるというわけにはいきません。

ビタミンDが不足すると、
成長不良や間接の変形、
骨粗鬆症になる危険が高まります。

ではビタミンDの必要摂取量をどのように取るかといえば、
太陽の光を浴びるということになります。

実は、一日に必要なビタミンDの80~90%は、
日光浴によって体内で生成されます。

太陽光線の中でも、美容の大敵とされている紫外線が、
ビタミンDの生成に重要な役割を果たしています。

したがって、バランスのとれた食事をしていても、
太陽の光を浴びて紫外線と接しなければ、
ビタミンDは不足してしまいます。

紫外線をブロックする日焼け止め(SPF30程度)を塗ると、
ビタミンDの生成能力は、97%もダウンするという報告もあります。

紫外線の弱い冬では、20分~30分ほど(※1)
日差しのもとに出るようにすると良いでしょう。

※1独立行政法人国立環境研究所 地球環境研究センター発表 2013年(平成25年)
国立環境研究所と東京家政大学の研究チームの調査によると、
健康な生活を送るために必要な日光浴の時間(両手と顔)は、
紫外線の弱い冬の12月の正午では、
那覇で8分、つくばでは22分となっています。

しかし、緯度の高い札幌では76分の日光浴をしないと
必要量のビタミンDを生成しないと報告しています。

日本ビタミン学会機関誌「Journal of Nutritional Science and Vitaminology」
(2013年8月30日発行)


ビタミンの発見者 鈴木梅太郎

皮膚や粘膜を丈夫に保ち、
感染予防にも効果があるビタミンA。

パソコンと向き合う時間が多く、
目を酷使する現代人にとって、
なくてなならないビタミンです。

ブタミンパワーとも呼ばれるビタミンB1 は
そのニックネームの通り、
豚肉に多く含まれています。

糖質をエネルギーに変える働きがある
ビタミンB1 は、
脳の働きの維持に重要な役割を果たしています。

ビタミンB1 は、
精製度が進んだ精白米にはあまり多く含まれていませんが、
胚芽米や玄米であれば豊富です。

ビタミンAやビタミンBの他に
ビタミンCやD、Kなども生命の維持に欠くことのできない
大切な調整素です。※1

これらの発見に大きな功績のある日本人がいます。

世界ではじめてビタミンB1の存在を明らかにした
鈴木梅太郎博士(1874-1943)です。

米ぬかの中に、
脚気(かっけ)を予防する成分(ビタミンB1)が
存在することを世界で初めて発表しました。

鈴木博士は、その未知の成分をアベリ酸と名づけましたが、
1912年にポーランドのフンクが、
米ぬかから同じ成分を分離し、
ラテン語で「生命」を意味する「Vita」と
窒素官能化合物アミン「amine」を合成した
ビタミン「vitamine」と名付けました。

その後、様々なビタミンの存在が明らかにされます。

2014年までに発見されているビタミンは、
水溶性ビタミンが9種類、脂溶性ビタミンが4種類の
合計13種類です。

ビタミンの研究は今も世界中で行われ、
その働きが明らかにされています。

これからも新しいビタミンが発見される可能性があります。

※1調整素
「ビタミン」は「代謝調節のための調節素」
「炭水化物」「脂質」「たんぱく質」は「エネルギーの源となる熱量素」、
「無機質(ミネラル)」は「人間の体そのものを作る構成素」
と分けられています。


日光浴の功罪

人間の生命を維持するためには、様々な栄養素を取り込む必要があります。

ビタミンは、細胞や血液などといった体の構成要素ではありませんが、
生理機能を調節したり、病気の発症を予防する健康に欠かすことのできない栄養素です。

そのひとつであるビタミンDには、免疫作用を高めたり、病気の予防効果があり、
骨の生育に必須な血中のカルシウム濃度を高める作用があることが判っています。

ビタミンDは、日光に当たることで体内で合成され、
成人の所要量であるおよそ100IU(※1)程度ならば、
1時間程度の日光浴で必要量を合成できるとされています。(※2)

もしビタミンDが不足すると、骨へのカルシウム沈着障害が発生し、骨粗しょう症、
骨軟化症が引き起こされるほか、高血圧、歯周病、自己免疫疾患などへの罹患率が
上昇する可能性があります。

四季によって日照時間が偏っている高緯度帯の北欧諸国では、
ビタミンDの欠乏は切実な問題です。

そこでビタミンDの不足分を補うためにサプリメントを摂取することが
推奨されています。

日本人の場合、ビタミンDが豊富な魚介類を多く食べるため、
昭和50年代までは充分摂取できていましたが、食生活の欧米化に伴い、
不足する傾向になっています。(※3)

特に妊婦、若年女性、寝たきり高齢者等を中心にビタミンD不足が
指摘されています。(※4)

できるだけ直射日光を避け、日焼けやシミを防ぐ日本の女性にとって、
日光に積極的に当たることは大問題だからです。

-続く-

※1:international unitの略で国際単位という意味で、
   ビタミンDの場合は、0.025μgとなっています。ただしビタミンの種類でIUの重さが違い、
   ビタミンAの場合は1IUは、0.3μgです。
※2:Holick, M. F., Vitamin D deficiency, N. Engl. J. Med, 357, 266-281, 2007.
※3:厚生労働省「平成21年度国民健康・栄養調査報告」
※4:Ono, Y., et al., Seasonal changes of serum 25-hydroxyvitamin D and intact parathyroid hormone levels in a normal Japanese population, J. Bone Miner Metab., 23, 147-151, 2005.


ビタミンの水と油

ビタミンという言葉は、広く世間によく知られています。

タンパク質のように、体を構成している物質ではありませんが、
体の機能を正常に保つために、なくてはならない働きをします。
日々に必要な量はわずかなのですが、体内で作られなかったり、
作られていても量が足りないため、食べ物から摂らなければなりません。

ビタミンについてお知らせすべき情報はたくさんあるのですが、
今回は水と油という視点からお話しましょう。

ビタミンには、油に溶けやすい脂溶性ビタミンと、水に溶けやすい水溶性ビタミンがあります。
脂溶性ビタミンには、A,D,E,Kが分類されています。
頭文字をちょっと並び替えてDEKA(デカ)→ビタミンデカと語呂合わせで覚えてみましょう。

脂溶性ビタミンは、読んで字のごとく油に溶けやすい性質があるため、
油と一緒に摂ると効果的に体内に吸収できます。

ビタミンAは抗酸化作用、ビタミンDは骨の形成、ビタミンEは老化防止、
ビタミンKは骨を丈夫にする、ビタミンはそれぞれ重要な役割を果たしています。

体内に摂取された脂溶性ビタミンは生命維持活動に使われ、
余った分は肝臓や脂肪に蓄えられます。
最低量は必要ですが、摂り過ぎは、過剰症になるおそれがあるので注意が必要です。

一方水溶性ビタミンには、B群やCなど合計9種類あります。
これをすべて覚えるのは大変ですから、大雑把にビタミンデカ(ビタミンDEKA)
以外は水溶性ビタミンと覚えておけば良いでしょう。

水溶性ビタミンは、抗酸化作用、免疫力を高める、代謝など重要な働きをを助けます。
水溶性ビタミンは水に溶けやすいため、食物から摂取しても、
余った分は体内に蓄積されることはなく、尿などで排出されます。
したがって必要な量を毎日摂ることが大切です。

少な過ぎるのも多過ぎるのもいけません。
大変だと思われるかもしれませんが、私達の体は、
極細の綱の上でバランスをとっている精密機械のようなものなのです。