お気楽ニホンミツバチのヒミツとは?

明治10年に輸入されたセイヨウミツバチ(A. mellifera ligustica:イタリア亜種)は、
養蜂用ミツバチとして、国内で広く飼育されています。

もともと日本には在来種のニホンミツバチがいました。

江戸時代には紀州藩などで、ハチミツを採取するために養蜂が行われていましたが、
ストレスを受けると巣箱を放棄してよそへ引っ越してしまう、
蜜を集める量が少ないという欠点がありました。

そこで、繁殖能力が高く、比較的攻撃しないセイヨウミツバチが、
輸入されハチミツ生産の主流となりました。

セイヨウミツバチの仕事は、花の蜜を集めるだけではありません。

イチゴやメロンなど果菜類栽培の花粉交配という仕事も担っています。

しかし、2006年に米国で報告された、働きバチが大量に失跡する
原因不明の蜂群崩壊症候群(CCD)が、世界規模の広がりを見せ、
ミツバチの不足によって日本への輸入が止まった事態に陥っています。

そこで野山の片隅に追いやられてしまっていたニホンミツバチが、
改めて見直されています。

というものニホンミツバチは、寒さに強く、
ミツバチに付くダニを自ら撃退し、
セイヨウミツバチに深刻な被害をもたらすふそ病や、チョーク病といった
恐ろしい病気にかかりません。

またミツバチの天敵であるスズメバチを自分たちの体温で蒸し焼きにして
撃退する習性も備えています。

日本の風土に適応し人に見捨てられても、
野山でたくましく生きのびるニホンミツバチは、
遺伝子の資源としても注目を浴びています。


ミツバチを探偵する-その壱-

世界の各地で民間伝承薬として利用されているプロポリスには、
抗菌作用、抗ウィルス作用、抗炎症作用、抗腫瘍作用など
多くの薬理学的な効果があることが報告されています。

研究初期の段階では、プロポリスは巣の補強や修理の材料的な用途として
使われていると考えられていました。

しかし、雑菌の繁殖を抑える生化学的な用途としても
利用していることが明らかになってくると、
プロポリスは、にわかに健康食品の素材として見直されます。

プロポリスの主な成分は、樹脂や花粉、ろう質ですが、
世界各地の植生は同じではありません。

そこでセイヨウミツバチ(以下ミツバチ)は、自分たちが暮らす環境の中から
プロポリスを作るのに適した植物を探すことになります。

ミツバチがプロポリスの原料として集めてくる植物を
「起源植物」と呼びます。

代表的なプロポリスの起源植物は、
ポプラとパッカリス・ドラクンクリフォリアです。

ヨーロッパを中心に古くから利用されているプロポリスは、
ポプラが起源植物です。

ミツバチはポプラの新芽から出る粘性の高い樹液を集めて巣に持ち帰り、
ポリフェノールの一種で、強力な抗酸化作用を持つフラボノイドを
多く含むプロポリスを作ります。

一方、ブラジル南東部のミナス・ジエライス州一帯に生息しているミツバチは、
パッカリス・ドラクンクリフォリアを起源植物としています。

ブラジル産プロポリスに含まれる成分はフラボノイドではなく
桂皮酸誘導体やテルペノイドなどが多く含まれています。

ヨーロッパ産とブラジル産では、組成は大きく異なっていますが、
抗菌性という点では共通しています。

ミツバチたちは、自分たちを守る起源植物をそれぞれの生息域で
本能的に探し当てています。

日本に生息するミツバチもまた、プロポリスを作るための
起源植物を見つけています。

特に沖縄に棲むミツバチが利用している起源植物が
面白いことになっています。

-続く-


バイオリンとプロポリス

17~18世紀に活躍したイタリア人の弦楽器製作者アントニオ・ストラディヴァリを
ご存じでしょうか?

彼が作ったバイオリンはラテン語でストラディヴァリウスと呼ばれ、
現存するおよそ600丁(ちょう)の価値は、いずれも数億円は下らない
と言われています。

バイオリニストがその名器を手に入れるために、数億円をかけても
究極の音を奏でたいという気持ちを理解することは難しいですが、
制作されてから300年を超えて、現代の聴衆や演奏者までもが魅せられる音色には、
職人の持つカリスマ性を感じずにはいられません。

残念ながら彼のバイオリン制作技術を受け継いだ息子たちが相次いで亡くなり、
その製法は伝承される事はありませんでした。

残されたストラディヴァリウスからすべてを推測するしかありません。

多くの研究者が、ひとつひとつの構成要素を研究し解明しつつあります。

バイオリンの表板には、年輪が均等に詰まっているイタリア北部パナヴェッジョの森に
育つマツ科のスプルースを使っていることが判っています。

バイオリンは、使用される木の材質や調整された表板の共鳴性と共に、
仕上げに使われるニスの質や塗布方法がその音色を左右すると言われています。

ストラディヴァリウスの秘密として昔から注目されていたのが、
独特の深い赤色をした上塗り用のニスでした。

残念ながらそのニスの製法も現在に伝えられてはいないため、何人もの研究者が
生涯をかけてその謎に挑みました。

その成分には、絶滅した虫の羽根、植物や鉱物など、樹脂成分として
ポルトガルのクレモナ地方で採れたプロポリスが調合されているなど
様々な研究結果が発表されています。

プロポリスは、古代エジプトのミイラの腐食剤として使用されていましたし、
現代でも化石などの保存用表面剤として広く利用されていますので、
プロポリスが使われていた可能性は大いに考えられます。

プロポリスに含まれる蜜蝋は、光沢剤の役目もはたします。

近年ヨーロッパの研究チームが、5丁のストラディヴァリウスからニスを
採取して分析した結果、一般的な松やにや油が使われているという発表を出していますが、
その本当の答えは、ストラディバリしか知り得ません。

私も健康維持のためにプロポリスを摂っていますが、
その他の効能として、世界的な美声を得ることができるかは、現在調査中です。


プロポリスの名前の由来とは

プロポリスの効用についての情報は、既にご存じの方も多いと思います。
先に紹介したミツバチが作り出すスグレモノ「プロポリス」は、
今や私達の健康の大いなる一助となっていますね。

ところで、この「プロポリス」の名前の由来となると
案外知らない方もいらっしゃるようです。
そこで、今回は、プロポリスという名前の由来のお話から始めさせていただきます。

プロポリスという言葉は、実は2つの意味の言葉がくっつけられてできた言葉なのです。
「プロ」とは、前面で守るという意味です。
プロテクトもやはりプロの付く類似語です。
では「ポリス」とはどのような言葉なのでしょう。

ヒントを差し上げます。

強大な都市を意味するメガロポリス、
ギリシャのアテネの象徴的建築物ともいえるアクロポリスにも
ポリスという言葉がついています。
アクロ(高い丘)+ポリスです。
なんとなく想像できますでしょうか?

もう正解がお判りになった方もいらっしゃるでしょうね。
ポリスとは、都市という意味です。
したがってプロポリスとは、都の前面を守るという意味になります。
ミツバチにとって幼虫を育てるための大切なベビールームに、
悪影響を与える微生物やウイルスが侵入してきては、一族の存亡に関わります。
そこで、巣の入り口をは非常に強力な殺菌作用がある「プロポリス」という
粘性のある物質で壁を作るのです。
ミツバチと同じように、この素晴らしい物質を人間も
作り出せればよいのでしょうが、
残念ながら、現代の科学を持ってしても未だ作り出すことができていません。
プロポリスは、体長わずか数センチのミツバチが、
子供たちを守るために作り出した愛の盾(たて)と言えるでしょう。