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車の運転席の隣には?

1492年にコロンブスがアメリカ大陸を発見して以来、
アメリカ開拓の歴史は、大陸を西へと横断するように進んでいきました。

いわゆるアメリカのフロンティア時代です。

多くの移民は、約束の地と夢見る西部を目指して
大移動をします。

ハリウッド映画でよくご存知のような
西部劇の舞台です。

治安の不安定な無法地帯で、
自分の家族や仲間を荒くれ者から守るために、
開拓者たちは武器を携帯します。

映画にもよく登場する幌馬車は、
荷物を携えて移動するには必要不可欠の車でした。

ジョン・ウェイン、クリント・イーストウッドなど
名優演じるカウボーイが乗る幌馬車は、
左に馬の手綱を握る御者、
その右にライフルやショットガンなど、
警護用の武器を持つ助手が座ります。

しかし西部開拓の上では必要不可欠だった幌馬車も、
時が流れ、蒸気機関車やガソリンで走る自動車が普及したことで、
移動するための車は、大きく様変わりします。

国全体の治安が良くなることで、
ショットガンを携えた助手は必要なくなります。

手綱は車のハンドルに変わりましたが、
助手席には、エンジンを手動で始動するために、
やはり人がひとり必要でした。

その後セルモーターを使うことで、
自動車の始動方法が改良されると、
運転手ひとりでも自動車は運転できるまでに進歩します。

助手席に座っていたホコリだらけ、油まみれの助手は姿を消し、
運転席の横には、愛する家族や麗しき女性が座るようになりました。

しかし開拓時代に、
御者席の隣に助手が座っていたという事実は残ります。

アメリカでは、助手席のことを
“ショットガン(Shotgun)”と呼びます。

アメリカ英語では、今でも
「助手席に座っている」という表現を
“riding shotgun”(ショットガンを携えて乗る)といいます。

ちなみに標準的な英語の表現では助手席のことは、
“a front passenger seat”=「前方の座席」です。

助手席には、笑顔が似合う素敵な同乗者が座る
平和な時代であってほしいものです。


大都会の真ん中に金の山

金の埋蔵量を世界で比較すると、
オーストラリア、南アフリカ、ロシア、チリ、インドネシアなどの国には、
多くの金が眠っています。

全世界の鉱山から掘り出され、金へと精錬される量は、
毎年およそ2400トンと言われています。

しかし、金の埋蔵量と生産量について試算すると、
20年ほどで世界中の金は掘り尽くされて無くなってしまうということが
危惧されています。

そこで、鉄やアルミニウムなどの金属がリサイクルされているように、
ゴミとして大量に廃棄される家電製品などの部品の中にある金についても、
有用な資源として再生しようという動きが高まっています。

そのような考え方は、
1980年代に東北大学の南條道夫教授らが提唱した
「都市鉱山」というアイディアであり、
日本文化の特徴でもある「もったいない」精神とも合致しています。

というのも、PETボトルリサイクル年次報告書(2005年度)によると、
日本国内のPETボトルの回収率は65.6%となっています。

この回収率は世界最高水準です。

EU諸国の回収率も年々上昇していますが、
同じ期間の調査結果と比較してみると、
34.6%(推定)と、
まだまだ日本の回収率には及びません。

これは資源が少ない日本国民が
資源を大切に利用していることを、
よく表している結果と言えます。

はじめにお話したように、金についても
同様なリサイクル産業が、国内で操業を始めています。

廃棄された携帯電話やスマートフォン、パソコンの部品から、
金などのレアメタル(希少金属※1)を回収する都市鉱山という考え方が
実践されています。

資源に恵まれていない日本ではありますが、
電子機器の部品に使用されている金などのレアメタルをリサイクルすることで、
高層ビルディングが立ち並ぶオフィス街が、
都市鉱山(英語ではurban mine:アーバン・マイン)となり、
金の埋蔵量世界一の国となる日も、そう遠くないかもしれません。

※1 レアメタル:レアメタル(希少金属)とは、非鉄金属の中で流通量が少なく、
希少な金属の総称です。主なものにコバルト、金、プラチナなどがあります。


世界一小さな国を守る人

世界には多くの国があります。

現在、国連に加盟している国の数は、
193か国(2015年11月現在)です。

それぞれの国には、風土や文化があり個性があります。

国の面積が世界一広い国は、
言わずと知れたロシアです。

細長くて小さな国のイメージがある日本は62位で、
ドイツよりも大きいということは意外です。

逆に世界一小さい国といえば、バチカン市国です。

国というよりは町といった方が納得するサイズの国ですが、
イタリア(ローマ)の中に位置する立派な独立国です。

人口はおよそ800人。

そのほとんどが聖職者と衛兵です。

ローマカトリック教会の総本山ですから、
聖職者の国籍はバチカン市国ですが、
警備する衛兵の国籍は、スイス人をはじめ様々です。

16世紀にミケランジェロがデザインしたと伝えられる、
青、黄、オレンジ縦縞模様の衛兵の軍服は、
イタリアの女性ばかりでなく、
世界中からやってくる観光客に人気があります。

衛兵になるためのリクルート条件は、
年齢19~およそ30歳までの独身男性。

身長は174センチ以上、カトリック教徒であり、
最近までは、スイス国籍であることが必須でした。

スイス国籍でなければならない条件は、
いまから700年以上も歴史を遡ります。

13世紀後半、神聖ローマ帝国の支配下にあったスイスは、
スイス同盟を結び、独立します。

独立する過程で優秀な軍隊を育てたスイスは、
その後、傭兵派遣を重要な産業とするようになります。

スイス軍の優秀さを示す史実として、
神聖ローマ帝国のカール大帝がバチカンに侵略を企てた時、
スイス人傭兵が、多くの犠牲を払いながらも法王を守り抜きました。

その勇敢さは法王の信頼を得て、バチカン市国の衛兵は、
スイス人でなければならないと定めます。

様々な侵略者と勇敢に戦ったスイス人衛兵隊でしたが、
現在ではこの出身地に関する条件は撤廃されています。

しかし、その名残りとして、
イタリア語が公用語のバチカン市国の中で
衛兵隊では、スイスの公用語であるドイツ語が使われています。

法王を守る役目を果たす衛兵隊ではありますが、
今では実務はイタリア警察が担い、
実戦用の武器を携行をしていません。

今でも手には斧と槍を装備していますが、
あくまでも象徴的な意味合いが強く、
実戦用の武器ではありません。

これからもバチカン市国衛兵が戦わない
平和な世界が続いてほしいものです。


紅葉の血液型

人の血液型は、大きくA型、B型、AB型、O型の4つに分類されます。

血液型占いや血液型による性格など、
真偽は別としても、
多くの人が血液型を気にしているのは事実です。

4つの血液型の特徴とは何なのでしょうか?

血液型は、血液に含まれる成分の違いによります。

赤血球の表面から出ている糖鎖構造に
ガラクト糖酸があればA型、
ガラクトースという糖があればB型、
両方の糖があればAB型、
どちらもなければO型になります。

日本人の場合、全体の40%がA型で一番多いのですが、
白色人種の場合は、A型、O型で80%、
黒色人種の場合は、O型の人が、50%を占めています。

血液型は、人間ばかりでなく
他の哺乳類にも存在します。

ヒトの血液型を調べるときと同様に、
血液の成分である赤血球と抗A抗体、抗B抗体を混ぜ、
その反応から血液型を特定する方法を用いて検査すると、
テナガザルの血液型は、A型、B型、AB型の3種類だということがわかっています。

チンパンジーには、A型、O型の2種類が存在します。

また動物ばかりでなく、植物にも血液型が存在します。

血液がない植物にも血液型が存在するということは不思議ですが、
前にも述べたように、
ガラクト糖酸とガラクトースのあるなしで血液型が違いますから、
植物においてもこれらの糖の存在次第で
血液型の分類は可能となります。

このルールに則って、分類すると
A型の植物:ヒサカキ、アオキ
B型の植物:セロリ、ツルマサキ
AB型の植物:ソバ、スモモ、バラ
O型の植物:ダイコン、ゴボウ、サザンカ、ツバキ
ということになります。

大変面白いのは、秋に紅葉するカエデには、
2種類の血液型があります。

しかも血液型の違いで紅葉の色も違っています。

赤く紅葉するカエデはO型で、
黄色く色づく紅葉はAB型です。

既に北海道では初雪が降ったというニュースも流れていますが、
南の方では、まだ冷え込む日があまりないため、
これからが本格的な紅葉でしょう。

カエデの血液型の違いを知りながらのモミジ狩りはいかがでしょうか?


車の「助手席」の始まりとは?

自動車の歴史を遡ってみると、
1769年、巨大な釜を乗せた車が走ったことが
始まりと言われています。

「キュニョーの砲車」とよばれるこの車は、
ルイ15世の治世のもとで、軍事力強化のため、
馬に頼っていた移動手段を機械化するために開発されたということです。

名前の由来は、大砲をけん引するための研究責任者が
キュニョーという人だったためです。

日本では江戸幕府の家老である田沼意次が、
幕府の税制改革を手がけていた頃の話です。

キュニョーの砲車の燃料は、薪でした。

それからおよそ40年後の1908年には、
アメリカのフォードが大衆車のT型を発売し、
世界はモータリゼーション(※1)の時代へと突き進みます。

ところで、運転手が座る席は運転席といいますが、
その横の座席を「助手席」と呼ぶのはなぜでしょうか?

英語では助手席のことを”passenger seat”、
直訳すると搭乗者席となります。

「助手席」という言葉の由来には、
いくつかの説がありますが、
誕生は、大正時代あたりと言われています。

当時の交通手段としては、
人力車が広く普及していましたが、
海外から自動車が輸入されるようになると、
高級な移動手段としてタクシーが登場します。

輸入された自動車は、
大柄な欧米人用の規格だったため、
和服を着た日本人にとって、車高が高く、
車の乗り降りは、裾が開けるなど一苦労でした。

そこでタクシーの運転席の隣に助手が座り、
お客の乗降を手助けしたそうです。

その席が「助手席」と呼ばれる所以は、
ここにあると言われています。

昭和に入ると、この助手さんは、
管理費が高くなるということで廃止されます。

※1モータリゼーション:英語のmotorizationとは、
「動力化」「自動車化」を意味する言葉です。
自動車が広く普及し、生活必需品となる現象のことです。


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