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嬉しいという漢字

このコラムは日本語で書かれています。

日本語は、漢字とひらがな、そしてカタカナで構成されています。

日本で生まれたひらがなは、「いろは」48文字、漢字に関しては数万を下りません。

漢字は紀元前17世紀頃に、占いの結果を書き記すために使用された
殷の甲骨文字から源を発していますが、その後中国で興隆した国々によって、
様々な意味や読みが加えられながら数を増やし、
朝鮮半島からやってきた渡来人や遣唐使たちによって日本へ伝えられたとされています。

数度にわたって伝えられた結果、同じ漢字でも二つの読み方が存在するようになり、
これは日本語を勉強する外国の人にとっては、かなり厄介な問題となっています。

例えば「正」の音読みは「しょう」あるいは「せい」です。

正月(しょうがつ)正解(せいかい)といった具合です。

また日本で独自に作られた漢字もあり、中国の人は知りません。

風が止まった状態を表す「凪」、山道の頂上を表す「峠」など、
「なるほど!」と納得する漢字もあります。

漢字は、ものの形を表す絵文字(象形文字)も多く、山や川という漢字は、
絵を文字にした基本形です。

また二つの意味を並べて表現する漢字もあります。

「好」という字は、女の人が子を抱いている様子から生まれたものです。

その様子を見る人は、きっと好ましい心になったからでしょう。

嬉しいの「嬉」は、女の人の横に喜ぶという字が並んでいます。

きっとこの漢字を発明した人は、
「うれしいという感情を表す文字はこれで決まりだ!」と、
後世の人達に伝えたかったのでしょう。

私達はこの文字をできるだけ多く、また先人の知恵に思いを馳せて、
感謝しながら使わなければならないのです。

女の人が喜ぶ時代ほど素敵な世はありません。


海苔と日本人の相思相愛について

周りを海に囲まれた日本ですから、海から獲れる食材と関わる暮らしは、
はるか昔から継がれています。

多くの方が歴史の授業で習われたと思いますが、
今から約1万6,500年前の縄文時代(じょうもんじだい)の貝塚から
発見される貝殻や魚の骨は、無言ながら雄弁にその事実を示しています。

残念ながら当時、海藻を食べていたという確証はありませんが、
可能性は大いにあるでしょう。

その後702年(大宝2年)執行された大宝律令(※1)には、
租税の対象として海苔が記載されています。

当時の食べ方は、乾燥した板海苔ではなく、生食が中心だったようです。

生で食べられていた頃の海苔は、季節の食べ物でしたが、
現在市販されている板海苔の製法が完成すると、
乾物として保存ができるようになったため、運送も容易になり、
海苔は広く日本で普及します。

千年をこす海苔とのつき合いは、腸内にある細菌にも影響を与えています。

フランスのロスコフ生物学研究所(Station Biologique de Roscoff)の
研究チームは、日本人の排泄物からしか見つからない
腸内微生物(Bacteroides plebeius)が、アマノリ属の海草、
つまり海苔に含まれる多糖類を分解する酵素を持っていることを発見しました。
(※2)

かつて日本人の先祖が、海苔を生のままで食べていたことで、
海洋性バクテリアが持つ分解能力を腸内微生物が取り込んだことが
その原因だと推測されています。

※1:大宝律令が執行された2月6日は「海苔の日」となっています。
※2:被験者になった北アメリカ在住の18人と日本人を比較した結果です。
   Pourquoi les Japonais dige`rent facilement les sushis
   Paris, 7 avril 2010


世界に誇れる海藻文化

日本人にとって海藻を食べるという習慣は、大変馴染みのあるものです。

世界遺産に登録された和食のダシといえば、昆布ですし、
佃煮や昆布巻きのように食材としての主役でもあります。

朝食にパンを食べる方は多くなりましたが、お腹が目覚めるのは、
白いご飯とワカメたっぷりのお味噌汁ではないでしょうか。

軽く炙った海苔とひじきの佃煮、ワカメのおひたしが加われば、
海藻類のオンパレードです。

これらの海藻は、旨味はもちろんのこと、栄養学的な観点からも、
非情に優秀な食べ物と言えます。

その中でもひじきやワカメは食物繊維含有率が高く、
食物繊維を1g摂るために必要な量は、
にんじんなら39g、さつまいもなら43gを食べなければなりませんが、
乾燥ひじきであれば2g、乾燥ワカメならば、2.5gでOKです。

効率よく食物繊維を摂るには、海藻が一番ということになります。

またミネラルが豊富だということも、ひじきやワカメの特徴です。

カルシウムをはじめ、リン、カリウムなどミネラルが豊富に含まれ、
例えば、カルシウムを豊富に含む食品の代名詞ともいえる牛乳と
比較してみると、110mg/100g(ホルスタイン種)に対して、
ひじきには1400mg/100gが含まれますから、
重量比で考えると10倍以上も多く含まれていることになります。(※1)

日本食には欠かせない海藻の素晴らしさは、まだまだあるのですが、
次回は、少し角度を変えた海苔と日本人の長い歴史についてお話しましょう。

※1:文部科学表 五訂増補日本食品標準成分表(本表)

-海苔と日本人の相思相愛についてへ続く-


チョット気になる五島の椿油

日本列島の西の端である長崎県の更に西100kmに、浮かぶ島々があります。

大小あわせて140あまりの島々が連なる五島列島です。

東シナ海を望む遠浅の海や鬼岳を代表とする火山景観など、
西海国立公園に指定されている美しい自然は、多くの人たちに愛されています。

その自然な下で育まれた食材は、言うまでもなく美味しいと評判です。

東シナ海で獲れる海の幸を始め、柔らかい肉質と肥育能力を兼ね備えた
五島の黒毛和牛は、全国で高い評価を受け、わざわざ東海や近畿地方から
子牛の買い付けに来るほどです。

また椿の自生地として名高い五島列島は、全国第二位の椿油の生産量を誇っています。

五島特産の椿油は、「西の五島、東の大島」と並び称されるほど、
人気があります。

椿油の主成分であるオレイン酸は、空気にさらしていても酸化せず
固まりにくい性質を持つ不乾性油で、保湿性を持続し、乾燥を防ぐ効果があります。

オレイン酸の含有率にも優れ、オリーブオイルに含まれるオレイン酸がおよそ75%に対して、
椿油には85%以上ものオレイン酸が含まれています。

しかも他の植物油と比較すると酸化しにくく、安定しているという点でも
椿油は優れています。

劣化しにくい植物油という特徴に注目され、従来の用途である美容用ばかりでなく
テンプラなどの高級揚げ油としても利用されています。

椿油は加熱安定性に優れているので、胃もたれやが胸焼けが心配で、
敬遠しがちな高齢者向けの食事にも使用できるのです。

また五島の椿油は、大手化粧品メーカーのシャンプー用成分として
指定されるほど信頼されています。


日光浴の功罪

人間の生命を維持するためには、様々な栄養素を取り込む必要があります。

ビタミンは、細胞や血液などといった体の構成要素ではありませんが、
生理機能を調節したり、病気の発症を予防する健康に欠かすことのできない栄養素です。

そのひとつであるビタミンDには、免疫作用を高めたり、病気の予防効果があり、
骨の生育に必須な血中のカルシウム濃度を高める作用があることが判っています。

ビタミンDは、日光に当たることで体内で合成され、
成人の所要量であるおよそ100IU(※1)程度ならば、
1時間程度の日光浴で必要量を合成できるとされています。(※2)

もしビタミンDが不足すると、骨へのカルシウム沈着障害が発生し、骨粗しょう症、
骨軟化症が引き起こされるほか、高血圧、歯周病、自己免疫疾患などへの罹患率が
上昇する可能性があります。

四季によって日照時間が偏っている高緯度帯の北欧諸国では、
ビタミンDの欠乏は切実な問題です。

そこでビタミンDの不足分を補うためにサプリメントを摂取することが
推奨されています。

日本人の場合、ビタミンDが豊富な魚介類を多く食べるため、
昭和50年代までは充分摂取できていましたが、食生活の欧米化に伴い、
不足する傾向になっています。(※3)

特に妊婦、若年女性、寝たきり高齢者等を中心にビタミンD不足が
指摘されています。(※4)

できるだけ直射日光を避け、日焼けやシミを防ぐ日本の女性にとって、
日光に積極的に当たることは大問題だからです。

-続く-

※1:international unitの略で国際単位という意味で、
   ビタミンDの場合は、0.025μgとなっています。ただしビタミンの種類でIUの重さが違い、
   ビタミンAの場合は1IUは、0.3μgです。
※2:Holick, M. F., Vitamin D deficiency, N. Engl. J. Med, 357, 266-281, 2007.
※3:厚生労働省「平成21年度国民健康・栄養調査報告」
※4:Ono, Y., et al., Seasonal changes of serum 25-hydroxyvitamin D and intact parathyroid hormone levels in a normal Japanese population, J. Bone Miner Metab., 23, 147-151, 2005.


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