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世界一小さな国を守る人

世界には多くの国があります。

現在、国連に加盟している国の数は、
193か国(2015年11月現在)です。

それぞれの国には、風土や文化があり個性があります。

国の面積が世界一広い国は、
言わずと知れたロシアです。

細長くて小さな国のイメージがある日本は62位で、
ドイツよりも大きいということは意外です。

逆に世界一小さい国といえば、バチカン市国です。

国というよりは町といった方が納得するサイズの国ですが、
イタリア(ローマ)の中に位置する立派な独立国です。

人口はおよそ800人。

そのほとんどが聖職者と衛兵です。

ローマカトリック教会の総本山ですから、
聖職者の国籍はバチカン市国ですが、
警備する衛兵の国籍は、スイス人をはじめ様々です。

16世紀にミケランジェロがデザインしたと伝えられる、
青、黄、オレンジ縦縞模様の衛兵の軍服は、
イタリアの女性ばかりでなく、
世界中からやってくる観光客に人気があります。

衛兵になるためのリクルート条件は、
年齢19~およそ30歳までの独身男性。

身長は174センチ以上、カトリック教徒であり、
最近までは、スイス国籍であることが必須でした。

スイス国籍でなければならない条件は、
いまから700年以上も歴史を遡ります。

13世紀後半、神聖ローマ帝国の支配下にあったスイスは、
スイス同盟を結び、独立します。

独立する過程で優秀な軍隊を育てたスイスは、
その後、傭兵派遣を重要な産業とするようになります。

スイス軍の優秀さを示す史実として、
神聖ローマ帝国のカール大帝がバチカンに侵略を企てた時、
スイス人傭兵が、多くの犠牲を払いながらも法王を守り抜きました。

その勇敢さは法王の信頼を得て、バチカン市国の衛兵は、
スイス人でなければならないと定めます。

様々な侵略者と勇敢に戦ったスイス人衛兵隊でしたが、
現在ではこの出身地に関する条件は撤廃されています。

しかし、その名残りとして、
イタリア語が公用語のバチカン市国の中で
衛兵隊では、スイスの公用語であるドイツ語が使われています。

法王を守る役目を果たす衛兵隊ではありますが、
今では実務はイタリア警察が担い、
実戦用の武器を携行をしていません。

今でも手には斧と槍を装備していますが、
あくまでも象徴的な意味合いが強く、
実戦用の武器ではありません。

これからもバチカン市国衛兵が戦わない
平和な世界が続いてほしいものです。


秋の夜空の四角形

朝夕の冷え込みは、
秋の終わりを感じさせるようになってきました。

その反面、夜空に広がる星々の輝きは、
その冷え込みさえも忘れさせる美しさです。

真夜中でさえ、明るさを失わない都会の空であっても、
秋の星座は他の季節に比べれば、
地上の明るさに負けない存在感を放ちます。

夏の星座の主役とも言える「夏の大三角形」である
白鳥座のデネブ、こと座のベガ、わし座のアルタイルは
いずれも一等星ですから、夏の夜更けには、
天空の真上に輝き、容易に見つけることができます。

秋が深まると、この大三角形は、
夜空から早めに退場します。

秋の主役は、
「秋の四辺形」と比喩されるペガサス座(ペガスス座)です。

四辺形を構成する星は、いずれも二等星で、
一等星と比べれば明るさとしては、
多少見劣りするものの、
秋の夜空の透明感も手伝って
なかなかの存在感を持っています。

夏の大三角形や秋の四辺形は、
夜空に広がる星座を探し始める起点として、
目印にされます。

秋の四辺形は、南の空の高いところにあります。

ほぼ正方形に見えるこの星たちは、
ペガサスの胴になり、
そこから星を繋いでいくと首や足になります。

魔女メデューサの血の中から生まれた
天馬であるペガサスにまつわる神話は、
愛と憎しみの満ちたもので、
ココでご紹介するには大いに興ざめですので、
ご興味のある方はギリシャ神話に記されている
ベレロフォーンとゼウスからの下りをお読み下さい。

はるか昔から星を頼りに航海していた船乗りが、
退屈しのぎの夜話から生まれたとも言われる
星座の物語です。

秋は、夜の星を見るには絶好に季節です。

よく晴れた夜に、少し厚着をして
温かいコーヒーをすすりながらの星空見物は、
気軽に楽しめる秋ならではのイベントです。


秋の空が透明な青になる理由とは?

「天高く馬肥ゆる秋」

天高くとは、
秋の空の透明度があがるという表現のひとつでしょう。

空の透明度が、夏から秋にかけて増すのは、
空気中に含まれる水蒸気の量が関係しています。

夏の青空は、太平洋に中心を持つ
南からやって来る高気圧です。

海の上で生まれた高気圧ですから、
たっぷりと水分を含んだ状態で日本にやってくるため、
太陽光線が、水蒸気で乱反射し、
日本特有の蒸し暑い夏の晴れということになります。

一方、秋の高気圧は、
大陸から移動してくるため、
空気中に含まれる水蒸気の量は少なくなります。

秋の空が夏の空よりも青く、高く見えるのは、
このような高気圧の出身地に違いがあるためです。

ところで、春の青空も
同じく大陸生まれの高気圧によるものですが、
少し事情が違います。

春の空の表現といえば、春霞(はるがすみ)です。

これは、高気圧が生まれる場所の環境が違うためです。

春先は、雪や氷が溶けたばかりで、その中に含まれる土や砂が
舞い上がりやすくなっています。

それに対して秋は、夏に育った草がホコリの舞い上がりを抑制するため、
秋に発生する高気圧には、
透明度を下げる邪魔者が少なくなります。

また、上昇気流の強さが変化することも秋の空を青くする理由の一つです。

秋になると、太陽の南中高度(※1)が低くなるため、
日中の最高気温が下がります。

太陽で暖められた空気の対流が弱まり、
地表からホコリが舞い上がる空気の層が、
空の低いところに留まる傾向にあります。

雲の様子も変わります。

上昇気流が弱くなるため、
入道雲(積乱雲)のような水分を多量に含む夏らしい雲の出番が少なくなります。

空の天井付近である上空5~13キロ付近に現れる
鳥の羽根のような「巻雲(けんうん)」や、
細かい雲片が空一面に広がる「うろこ雲」などが、フワリフワリと浮かびます。

※1 南中高度
一日の中で、太陽がいちばん高く上がったときの
地平線との間の角度です。
夏至のときの南中高度がいちばん高く、
冬至の南中高度がいちばん低くなります。


フランス語の難解な数字事情

アン・ドゥ・トロワといえば、
フランス語の1・2・3です。

バレイの基本練習で使わている言葉として、
広く知られていますが、
フランス語の数字の表現が難解なことを
知る人は多くありません。

その一例が70です。

フランス語が公用語として広く使われている
ベルギーやスイスでは、
「70」は septante(セプタン)
「80」はhuitante(ユイタン)
という10進法に準じた表現で使われていますが、
本家フランスでは少し事情が違います。

「70」は soixante-dix(ソワサント ディス=60と10)、
「71」は soixante-et-onze(ソワサン テ オンズ=60と11)、
「72」は soixante-douze(ソワサント ドゥーズ=60と12)と続きます。

その後の数字もなかなか難しいです。

「80」は quatre-vingt(カトゥル ヴァン=20が4)、
「90」は quatre-vingt-dix(カトゥル ヴァン ディス=20が4と10)、
「91」は quatre-vingt-onze(カトゥル ヴァン オンズ=20が4と11)となります。

シンプルな十進法現で数字が表現できる日本語でありがたいような気もしますが、
フィールズ賞※1という世界でも権威のある賞を
フランス人は13人も受賞しています。

今まで合計55人がこの受賞していますが、
フランスはアメリカと並び最も多くの受賞者を
輩出している数学先進国です。

数学の世界で、
フランスが一級の役割果たしている事実と
複雑な数字の表し方を生み出した国民性には
なにか関係があるのかもしれません。

※1フィールズ賞(2014年現在)
数学のノーベル賞とも呼ばれ、受賞は4年に1度で、
一度に4名までの受賞しか認められていません。
さらに受賞対象者は40歳以下と規定されているため、
ノーベル賞を受賞よりも難しいともいわれています。


学校で一番聴かれるクラシックとは

学校の授業では、
様々な作曲家の音楽を
鑑賞する機会があります。

教材として現代音楽を聴くことも
増えてはいますが、
やはり中世のヨーロッパ音楽を
中心に鑑賞する授業が
最も多いでしょう。

モーツァルト、ベートーベン、バッハなど
数百年の長きにわたって、
聴き継がれている名曲に触れることは、
とてもよい経験です。

ところで、
専門的に音楽を学ばれた方は別として、
フランスの作曲家である
ルイ・ヴィエルヌ(Louis Vierne 1870-1937 )を
ご存じの方は、あまり多くはないでしょう。

しかし、日本の学校では、
毎日、子どもたちは、彼の曲を
聞いています。

その曲名は、
「幻想的小品 ウエストミンスターの鐘」
(Carillon de West minster)」です。

この曲の名前を聴いて、
旋律を思い出されるようなクラシック通は、
決して多くはないでしょうが、
「キーンコーンカーンコーン」という
擬音語を見た瞬間に、
その旋律を思い出される方は、
少なくないはずです。

学校の始業、終業、授業の終わりに
流れるその旋律は、
ルイ・ヴィエルヌの曲の主題です。

もともとこのメロディーは、
ロンドンにあるビッグ・ベンの
ウェストミンスターの鐘に
使われているものです。

授業の節目を告げるメロディーは、
イギリスからの舶来品ということです。

ロンドンへ旅行される機会がありましたら、
ウェストミンスター宮殿※1の写真を
撮るばかりでなく、時計塔(ビッグベン)の
オリジナルメロディーも聴かれてはいかがでしょうか。

※1 ウェストミンスター宮殿:ロンドンのテムズ川沿いに建つ、
議会制民主主義誕生の舞台となった建物で、
現在は、イギリスの国会議事堂としての役割を担っています。
ビッグベンは、国会議事堂に付属している時計塔の鐘の愛称です。


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