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トイレのマークとオリンピック

不慣れな場所でトイレを探すのは、
その切迫度によっては、大変な思いをします。

そんなときに無意識に探すのがトイレのマークです。

男の人と女の人が並んで立っているマークは、救いの神となります。

このトイレのマークは、ピクトグラム(※1)と言われる標識で、
文字よりも解りやすく文字よりも訴求力が高い、優れた絵文字です。

絵文字の歴史は、スペインのアルタミラ洞窟に描かれた人や獣の壁画まで
逆上ることになるのでしょう。

一見するだけでわかる絵文字は、
時間や文字文化を超えて理解できる明快さがあります。

日本においてピクトグラムが初めて表舞台に出たのは、
1964年に日本で開催された東京オリンピックです。

多くの国からくる選手や観光客のために
競技や施設を表すためにピクトグラムが活用されました。

しかし、当時は
目新しいそのデザインがよく理解できない日本人も多かったため、
ピクトグラムの下に「化粧室」「案内所」などの日本語も併記されていました。

東京オリンピックで使用された競技種目を表すピクトグラムは、
世界各国の評判がよく、その後開催されたオリンピックでも、
ピクトグラムはデザインを変えながら、受け継がれていきました。

そのためオリンピック競技種目のピクトグラムは、
「絵ことばの国際的リレー」と呼ばれています。

トイレのピクトグラムは、
1970年に開催された大阪万国博覧会に登場します。

今では考えられないことですが、
トイレのサインであると理解できる人はまだ少なく、
その横に「便所」と張り紙がされていたそうです。

トイレのピクトグラムがトイレの案内用サインとして社会に浸透するまでには、
10年以上の時間が必要とされました。

来年の2016年のリオデジャネイロオリンピック、
そして2020年に開催予定の東京オリンピックでは、
どのようなピクトグラムが出てくるのでしょうか。

※1 ピクトグラム(pictogram)
「絵文字」と呼ばれ、何らかの情報や注意を示すために表示されるサインです。
表したい内容を単純なデザインとして表現します。代表的なものには、
トイレや非常口、エスカレーターなどがあります。

交通モビリティ・エコロジー財団の推奨するピクトグラム
交通モビリティ・エコロジー財団のホームページより転用


大都会の真ん中に金の山

金の埋蔵量を世界で比較すると、
オーストラリア、南アフリカ、ロシア、チリ、インドネシアなどの国には、
多くの金が眠っています。

全世界の鉱山から掘り出され、金へと精錬される量は、
毎年およそ2400トンと言われています。

しかし、金の埋蔵量と生産量について試算すると、
20年ほどで世界中の金は掘り尽くされて無くなってしまうということが
危惧されています。

そこで、鉄やアルミニウムなどの金属がリサイクルされているように、
ゴミとして大量に廃棄される家電製品などの部品の中にある金についても、
有用な資源として再生しようという動きが高まっています。

そのような考え方は、
1980年代に東北大学の南條道夫教授らが提唱した
「都市鉱山」というアイディアであり、
日本文化の特徴でもある「もったいない」精神とも合致しています。

というのも、PETボトルリサイクル年次報告書(2005年度)によると、
日本国内のPETボトルの回収率は65.6%となっています。

この回収率は世界最高水準です。

EU諸国の回収率も年々上昇していますが、
同じ期間の調査結果と比較してみると、
34.6%(推定)と、
まだまだ日本の回収率には及びません。

これは資源が少ない日本国民が
資源を大切に利用していることを、
よく表している結果と言えます。

はじめにお話したように、金についても
同様なリサイクル産業が、国内で操業を始めています。

廃棄された携帯電話やスマートフォン、パソコンの部品から、
金などのレアメタル(希少金属※1)を回収する都市鉱山という考え方が
実践されています。

資源に恵まれていない日本ではありますが、
電子機器の部品に使用されている金などのレアメタルをリサイクルすることで、
高層ビルディングが立ち並ぶオフィス街が、
都市鉱山(英語ではurban mine:アーバン・マイン)となり、
金の埋蔵量世界一の国となる日も、そう遠くないかもしれません。

※1 レアメタル:レアメタル(希少金属)とは、非鉄金属の中で流通量が少なく、
希少な金属の総称です。主なものにコバルト、金、プラチナなどがあります。


おいしく米を噛む

「太陽」と呼ばれる体のツボがあります。

食べ物を噛むために口を動かした時、
筋肉が動くところです。

いわゆる「こめかみ」辺りです。

目が疲れた時や頭痛がする時に
このこめかみを気持ち良い程度の強さで押すと、
症状が和らいだという経験をされた方も
少なくないでしょう。

こめかみのツボ=太陽には、
「眼医者ごろし」という異名もあり、
昔から眼の疲れの予防と改善に
効果があると言われています。

こめかみという呼び方は、
生米を固いまま食べていた古代に、
米を噛む時にこの場所がよく動くことから
そのような呼び名になったと伝えられています。

今では、
ふっくらと炊いたお米を食べることが標準となったため、
お米をよく噛んで食べるという機会は少なくなりました。

ましてや秋に収穫されたばかりの新米は、
噛まずに飲み込みたいほど美味しいものです。

一方、旨いということを言い表す時に、
「噛めば噛むほど味が出る」という表現があります。

米の成分の8割ぐらいは、でんぷんです。

精米された状態の白米のでんぷんは、
炊くことで消化のよいでんぷんに変化します。

このでんぷんは、噛むことで
口の中に分泌される唾液に含まれる消化酵素によって、
マルトース、甘い麦芽糖に分解されます。

つまり、噛めば噛むほど甘く美味しくなるというわけです。

古来から食事の時の行儀として、
ひとくち食べ物を口に入れたら、
30回は噛みなさいと言われてきました。

しかし最近では、柔らかい食べ物が多くなったため、
噛む回数が50年くらい前に比べて、
半分に減ってしまったといわれています。(※1)

よく噛んで食べることは、
お米の味がより美味しくなるだけでなく、
脳の働きを活発にする、 歯の病気を防ぐ、
胃腸の働きをよくするなど、体にとってよい効果があります。

先人の伝えには確かに意味があるということです。

よく噛むことで、この時期しか味わえない新米を
より健康的に美味しく味わって下さい。

※1 噛む回数について
新潟農学部応用生物化科 大坪研一教授の情報による。


ニュートンと落ちないリンゴ

フランスの哲学者ボルテールの著書”Essay on Epic Poetry”(1727年発行)の中に、
万有引力の法則を発見したニュートンについて書かれた記述があります。

その内容とは、ニュートンの姪に聞いた話として、
ニュートンが庭仕事をしている時に、
リンゴの木からリンゴの果実が落ちるのを見て、
重力に関する発想(アイディア)を見出したというものです。

この逸話はその後、様々な解釈が付けられながらも、
引力という概念を理解するのに、大変分かりやすい例であったため、
伝聞として多くの人に語られることになります。

さて、話は現代の日本に戻るのですが、
1991年(平成3年)9月28日、
台風19号が風速50m以上の勢力を保ったまま、
青森県を襲いました。

この台風は九州でも農作物に甚大な被害を与えましたが、
青森県においても、リンゴの木に大きな被害を与えました。

この台風の影響で収穫前のリンゴの9割が落ち、
栽培農家は途方に暮れました。

しかし、若いリンゴ農園経営者から
ユニークな提案が出されます。

それは発想の転換です。

9割のリンゴは落ちてしまったが、
残り1割のリンゴは落ちなかった。

つまり、暴風雨という困難にさらされながらも、
落ちなかったリンゴは、
困難にしぶとく、縁起が良いリンゴだという発想です。

早速、縁起物の落ちないリンゴは、
神社で販売されました。

ユニークなリンゴは、
新聞やテレビでも報道され、
全国的に有名にもなりました。

この落ちないりんごは、
1個1000円という高値で売られたのですが、
受験を控えた学生などの縁起物として
瞬く間に完売し、
落ちてしまったリンゴの売上げ分をも
カバーすることができました。

その後、落ちないリンゴの販売事業は法人化され、
主にインターネットを通じ、産地直送志向の顧客を対象に、
リンゴ販売を行なっています。


美しい身だしなみという漢字

「名は体を表す」とは、
付けられた名前が、
その物や人の性質や実体を表すということです。

同じような言葉に
「体は心を表す」という言葉もあります。

心得や心の持ち方が、
姿勢やしぐさ、内面から発せられる雰囲気や容姿に
表れるということでしょう。

漢字にもその造りが、
心の持ちようを表している、
あるいはそのような形になることを望むという想いが
込められている漢字があります。

子供の頃から社会での守るべきことや作法を教えることを
「しつけ」と言います。

箸の持ち方、お茶の飲み方から始まり、
初対面の人と会う時のあいさつなど、
暮らしの中の全ての礼儀や作法を教えることです。

昔から「しつけ」とは、
「しつける(しぐさや言葉を行ない慣れる)」、
あるいは「し続ける(行い続ける)」に通じると言われてきました。

学校から帰った子供たちが、
玄関でクツを揃えずに家の中へ入るときに、
「ちゃんとクツを揃えてから上がりなさい。」
と叱るお母さんの行為は、理解できるにしても、
しつけという面からはよろしくないと言えます。

しつけの中での解決法は、
脱ぎ捨てたクツを何も言わずに母親が、
自ら並べなおすことを続けることです。

これがしつけとは、到底信じられませんが、
並べ直すことの繰り返しによって、
子供たちは、母の姿を学んでいくのです。

母親が乱雑に並んだクツを喜んで並べる姿を見ることで、
子供たちは、整理整頓された玄関が、
気持ちの良いものだと理解できるようになり、
自ら進んでクツを並べるようになるまで、
辛抱強くクツを並べることを「し続ける」ことが
回り道のようで早道なのです。

「なにを悠長な…。」というお言葉が、
聞こえてきそうな話ですが、
漢字にその真実が見られます。

しつけという言葉を漢字で書くと「躾」となります。

「身を美しくする」ことが「しつけ」とは、
なんとも先人が残した漢字には、
落語に出てくる長屋のご隠居さんを彷彿とさせる、
粋な姿を感じます。

さてこのクツの揃え方の躾が真実か否かは、
実践して明らかにするしかありません。

躾る側の胆力を試されることなりますが…、
さて真偽は如何に。


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