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旧暦の七夕は8月の行事

連日続く暑さからはとても想像できませんが、
江戸時代の暦(こよみ)では、
8月は木の葉が紅葉して落ちる「葉落ち月」ということで、
葉月と呼ばれています。

日頃はほとんど縁のない旧暦ですが、
日本の伝統行事には、
いまだに深く根付いています。

例えば現在の暦(こよみ)の7月7日の七夕は、
本州・四国・九州では、ちょうど梅雨の時期にあたり、
七夕の主役となる星たちがくっきり見られるチャンスは少なく、
盛り上がりに欠けます。

ところが旧暦の7月7日(2015年の場合は、8月20日)は、
気候が安定することが多く、
織姫星や彦星、天の川の見える位置も高くなって、
星のロマンを楽しむことができます。

旧暦の七夕は、夏休みの時期とも重なるため、
宮城県仙台市の「仙台七夕」のように観光イベントとして、
しっかり旧暦の行事を守っている地域もあります。

国立天文台も「七夕の行事は、
7月7日といっても現在使われている暦ではなく、
旧暦など太陰太陽暦の7月7日に行われていました。
これは、月齢およそ6の月が南西の空に輝く夏の夜になります。
現在の暦での7月7日は、
たいてい梅雨のさなかで、なかなか星も見られません」ということで、
旧暦の7月7日を「伝統的七夕」と呼び、広報しています。

7月7日の夜に星空が見られなかった方にとって、
8月20日の旧暦の七夕にもう一度チャンスがあります。

夜になっても暑さが残るこの時期ですが、
天の川にまつわる愛の天体ショーに
思いを馳せながら、涼まれてはいかがでしょうか。


桜の花と樹の命

桜の花が開花したという便りが
届いたかと思う間もなく、
満開となりました。

百人一首に、
『ひさかたの 光のどけき 春の日に
しずこころ(静心)なく 花の散るらむ』(紀友則)
という有名な歌があります。

桜の花が、散り急ぐ様子を惜しむ歌とされていますが、
桜の花が咲く季節になると、
「いつ咲くのか」「見頃はいつか」「いつまで咲いているのか」
と、まさに落ち着きをなくしてしまうのは、
私たち人間側のようです。

一斉に咲き誇った花が散ってしまうと、
青々とした葉が生い茂りますが、
実を見かけることはあまりありませんね。

桜の木には、様々な種類がありますが、
全国に広く植えられて、桜並木になっているのは、
ソメイヨシノと言われる品種です。

ソメイヨシノは、
『オオシマザクラ』と『エドヒガシ』という2つの野生種から、
観賞用として品種改良されたものです。

ヤマザクラなどの他の品種の台木に、
ソメイヨシノの枝を短く切った穂木をつなぐという
接ぎ木という方法で、大量生産されました。

穂木は、元々一本の木なので、
ソメイヨシノは、みな同じDNAをもつ
クローン植物ということになります。

桜は、同じ個体では、
受粉しないという性質を持っているため、
たとえ何百本という桜が並んでいても、
実はなりません。

古くから、日本人が愛してやまない桜の花は、
まさに日本のシンボルであり、
花見という文化も、広く世界に認知され始めています。

しかし、ソメイヨシノは、菌に弱く、
樹齢40年を超えると樹勢衰退の危険度が増し、
寿命が60年しかないという説もあります。

人々を楽しませるために植えられた桜の木が、
大きく育つと通行の邪魔になるからと
枝を切られるのはよくあることです。

また、心無い花見客によって、
枝を折られたり、根を踏み荒されたりと
満身創痍の状態で踏ん張っている状態なのかも知れません。

樹木の寿命は、周囲の環境により左右されます。

もともと人間の手によって
生み出されたソメイヨシノの桜の木。

枯らさないように、大切に守り育てるのは、
私たちの使命なのではないでしょうか。


三寒四温は冬の季語

日差しの明るさに、
春は確かに近づいていると感じられますが、
この季節、とにかく天気の変化が激しいですね。

昨日は、20℃近くまで気温が上がったのに、
今日は、10℃にも届かなかった、
そんなことも、珍しくはありません。

この時期に、よく耳にするのが
『三寒四温』という言葉です。

一週間のうち三日寒い日が続くと、
その後、四日は比較的温かい日が続くという意味で、
そのような日々を繰り返しながら
本格的な春を迎えるのだととらえている人も
多いのではないでしょうか。

実は、この言葉、
季節の変わり目で変化しやすいこの時期の気候を表すものではなく、
だんだん暖かくなるという意味もありません。

シベリア高気圧からの寒気の強弱により、
中国北部や朝鮮本島などに
顕著に表れる現象を指す言葉で、
日本では年に1回あるかないか、
しかも1~2月ごろに表れる気候のことなのです。

そのため、俳句の世界では、
『三寒四温』は春の季語ではなく、
冬の季語とされています。

春先の寒暖の変化に関係するのは、
この時期、活動が最も盛んになる
日本付近の温帯低気圧です。

この低気圧には、
日本海低気圧と南岸低気圧があります。

日本海低気圧は、
日本海を北東に進みながら発達するもので、
この低気圧が急速に発達すると、
風が急に強まり、「春一番」となります。

一方、南岸低気圧とは、
日本列島の南岸を沿うようにして北東に進むもので、
立春以降に主に関東地方で季節外れの雪を降らせるのも、
この低気圧の影響です。

今の時期は、
この二つの低気圧のせめぎあいによって
不安定な天候がもたらされます。

さらに,日本海側と太平洋側で発達した2つの低気圧が、
列島を挟んで北東方向に進む『二つ玉低気圧』
と呼ばれるものがあります。

この低気圧は広範囲に荒天をもたらし、
山や海で多くの遭難事故を起こすこともあります。

これらの低気圧がいつ生じ、
どのように発達するかは、
決して日本列島の周辺だけで決まるのではありません。

見上げる空は一つで、世界はつながっています。

気象状況に関しても、
地球規模でとらえていかなければならないことがらなのです。


花も実もある話

他の木の花が
ようやくつぼみを膨らませ始めて来る頃、
いち早く咲いて、
春の訪れを知らせてくれるのが梅の花です。

皆さんの近所にも、
その馥郁(ふくいく)※1とした香りを漂わせている場所が
あるでしょう。

庭の1本の木であることも多いでしょうが、
全国各地の梅の名所には
数千本を超える数の木が植えられている
『梅林』『梅園』と呼ばれる場所が少なくありません。

このように梅が広い土地に
数多く植えられているのには、
その歴史と深い関わりがあります。

梅は、奈良時代に中国から伝来したものですが、
中国では、花を観賞するよりも、
その実を漢方薬の鳥梅や、
塩漬けにして利用していました。

日本に入ってきた梅は、
まずその可憐な花が注目され、
愛でられていましたが、
平安時代には、
梅干しが作られ、
鎌倉時代には、
茶菓子として供された記録が残っています。

梅干しの効用は、
現代でも広く知られている所ですが、
戦国時代にも、食欲を促進し、
息切れを防止するものとして、
食されていたようです。

江戸時代になると、
梅干しが庶民の食べ物として広く普及し、
多くの藩が梅の栽培や梅干しづくりを奨励し、
保護政策をとりました。

徳川御三家として知られる、
水戸藩・紀州藩・尾張藩も同様で、
中でも、紀州・和歌山県は
『南高梅』というブランド梅を初めてとして、
今も梅の収穫量日本一を誇っていますし、
水戸の偕楽園は、
1003000本の梅を見ようと
毎年全国から訪れる多くの観光客で賑わいます。

現代では、
観賞を目的として品種改良された花梅、
実を採ることを目的とした実梅、
合わせてわせて300種以上の梅の木があると
言われていますが、
いずれにしても、私たち日本人にとって、
梅は、長い間、身近で、愛すべき存在だったのですね。

※1馥郁(ふくいく):よい香りがただよっているさま。

 

 

 

 


麦は踏まれて強くなる

古くから麦作では、
麦踏みが農作業の一つとして
行われています。

植物を育てる場合、
柔らかい土は植物にとって、
根が伸びやすく、
根の呼吸もスムーズになります。

根は基本的に、
先端近くの根毛でしか
水を吸収しません。

根のそれ以外の部分は
空気に触れさせて
呼吸出来る状態にしておきます。

土が詰まった状態だと、
根腐れを起こすからです。

同じ理由で、
ヒヤシンスの水栽培の場合でも、
根が伸びると呼吸のことを考えて
水を減らします。

しかし、麦の栽培では、
ちょっと事情が違います。

ちょうど2月の時期、
お米の裏作として栽培されている麦畑では、
育ちつつある若葉を
踏んでいる作業が、
よく見かけられます。

かわいい若葉をいじめているようにも見えますが、
麦踏みは、
芽が出て伸び始める時期に
根元を踏むことで、
根元が強化され、
その後、麦の背丈が伸びた時に、
風に負けない強い麦が育つのです。

霜柱による根の浮き上がり防止と、
寒害や凍害の予防のためでもあります。

しかも、
よく踏み込まれた麦と
踏み込みが足りない麦を比較すると、
よく踏まれた麦の根は、
数が太く、しかも多くなっています。

土から上の茎葉だけを見ると、
同じように見えても、地下部には、
麦踏み効果がしっかり現れるのです。

手入れがされた麦には、
その結果が、ちゃんと現れます。

やまだの青汁」の原料として使われている大麦若葉にも、
しっかり育った栄養素がたっぷりと含まれています。

ビタミンA、B、Cといったビタミン群、ミネラル、マグネシウム、
マンガン、亜鉛、カリウムなどのミネラル群などが豊富です。

また、美容と健康にも良いとされ注目されている
SOD酵素なども含まれています。


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