日光浴の功罪
人間の生命を維持するためには、様々な栄養素を取り込む必要があります。
ビタミンは、細胞や血液などといった体の構成要素ではありませんが、
生理機能を調節したり、病気の発症を予防する健康に欠かすことのできない栄養素です。
そのひとつであるビタミンDには、免疫作用を高めたり、病気の予防効果があり、
骨の生育に必須な血中のカルシウム濃度を高める作用があることが判っています。
ビタミンDは、日光に当たることで体内で合成され、
成人の所要量であるおよそ100IU(※1)程度ならば、
1時間程度の日光浴で必要量を合成できるとされています。(※2)
もしビタミンDが不足すると、骨へのカルシウム沈着障害が発生し、骨粗しょう症、
骨軟化症が引き起こされるほか、高血圧、歯周病、自己免疫疾患などへの罹患率が
上昇する可能性があります。
四季によって日照時間が偏っている高緯度帯の北欧諸国では、
ビタミンDの欠乏は切実な問題です。
そこでビタミンDの不足分を補うためにサプリメントを摂取することが
推奨されています。
日本人の場合、ビタミンDが豊富な魚介類を多く食べるため、
昭和50年代までは充分摂取できていましたが、食生活の欧米化に伴い、
不足する傾向になっています。(※3)
特に妊婦、若年女性、寝たきり高齢者等を中心にビタミンD不足が
指摘されています。(※4)
できるだけ直射日光を避け、日焼けやシミを防ぐ日本の女性にとって、
日光に積極的に当たることは大問題だからです。
-続く-
※1:international unitの略で国際単位という意味で、
ビタミンDの場合は、0.025μgとなっています。ただしビタミンの種類でIUの重さが違い、
ビタミンAの場合は1IUは、0.3μgです。
※2:Holick, M. F., Vitamin D deficiency, N. Engl. J. Med, 357, 266-281, 2007.
※3:厚生労働省「平成21年度国民健康・栄養調査報告」
※4:Ono, Y., et al., Seasonal changes of serum 25-hydroxyvitamin D and intact parathyroid hormone levels in a normal Japanese population, J. Bone Miner Metab., 23, 147-151, 2005.