パリ流江戸しぐさ

江戸時代に考えられたとされ、
隣人の心得集とも言われる「江戸しぐさ」は、
現代人の規範を知るのに大変役に立ちます。

道ですれ違うときに、
傘がぶつからないように
少し傘を傾けて上手にすれ違う「傘かしげ」や、
隣り合わせの人とこぶし一つ分の余裕を持って座る「こぶし腰浮かせ」など、
現代の人にとっても貴重な助言集です。

このような他人へのおもいやりは、
日本独自のものと考えられがちですが、
おもいやりの心は世界共通です。

ヨーロッパでは、
初対面の人であっても気軽に会話ができ、
コミュニケーション能力が高いと言えます。

特にお年寄りに対して敬意払う姿は、
感動的です。

パリに住む友人が地下鉄に乗っていた時のことです。

お年寄りと青年が、
楽しげに話している場面に遭遇しました。

その様子は、おばあさんと孫といった雰囲気です。

パリのオペラ座駅で、
二人と友人は共に下車し、
地上までの通路でも、
相変わらず二人は、
会話を弾ませています。

オペラ座正面の出口は、
数十段の階段があるのですが、
若者は、おばあさんの荷物を手に持って
並んで上っていきます。

さらに地下鉄の出口にある重いドアを開けて、
おばあさんをエスコートします。

外にでると、急に空が広がり、
オペラ座の金色に輝く女神像が
眩しく輝いています。

二人は、さよならの挨拶をすると、
おばあさんは出口広場の右側へ渡り、
青年は、その反対側へと行きました。

二人はただの通りすがりだったのです。

このさりげない若者の親切と、
受け側であるおばあさんの態度は、
押し付けがましくなく、
またへりくだるわけでもない距離感に
友人は、大変感銘を受けたそうです。


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