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痛みを予測することで痛みを治す

ぎっくり腰になったという人は、少なくありません。

一度ぎっくり腰の激痛を経験すると、
そのイメージが記憶に深く刻まれ、
前に屈んだ瞬間に
「あ、ぎっくり腰になる」という思いが脳裏に浮かび、
痛さに備えて体を硬く身構えてしまうことで、
逆にぎっくり腰が再発するということが少なくありません。

このようなイメージは「自動思考」と呼ばれ、
その記憶を自分自身で修正することは
難しいといわれています。

また長らく腰痛を患っている人は、
ちょっとした動作のたびに「また痛くなる」とイメージし、
考えないようにしようと思っても、
そう考えずにはいられません。

このようなストレスが関係する腰痛には、
認知行動療法が効果的だと言われています。

認知行動療法とは、
患者の「現実の受け取り方や考え方」に基づく
感情や行動に注目し、
その記憶を変えることで疾患を治す療法のことです。

「また痛くなる」という記憶に囚われて、
痛みに備えて身構えてしまう自動思考を、
日常の姿勢を改め、
過去の記憶と現実の行動の食い違いを利用し、
腰を痛めそうな姿勢の記憶を変更することで、
「また痛くなる」と考えから開放され、
最終的には、多少の動きでは、
痛みは無視することができるようになります。

認知行動療法は主に精神科で行われますが、
筋肉や骨格の問題を解決する整形外科と連携して治療する
リエゾン療法(連携療法)もあります。

リエゾン療法とは、
整形外科、精神科や心療内科など、
複数の医師が連携(リエゾン)して治療を行ない、
治療を心体の両面から行う方法です。

運動療法認知行動療法、薬物療法などを併せて行います。


ストレスと腰痛

二本足歩行の人間にとって、
腰の痛みとは残念ながら
宿命的な付き合いがあるといえます。

もともと痛みは、
生物にとって必要な情報です。

というのも重いものを持って、
筋肉に感じる負荷の大きさや
関節に加わる外からの圧力に対する
過度の負荷によって、
耐えられない限界点を
痛みという信号で知らせてくれるわけです。

全く痛みを感じないほうが
正常ではないということになります。

その筋力や関節の限界を知っているからこそ、
心身ともに健康でいられるわけです。

したがって、腰痛があるということは、
ある意味正常な体であるという証でもあります。

とは言っても、腰痛によって日常生活に
支障をきたしているのであれば、
少なくとも不自由なく過ごせるレベルまで
痛みを軽減することは、必要です。

一般的に、腰痛や発熱の治療には、
非ステロイド性抗炎症薬が使われます。

非ステロイド性抗炎症薬とは、
抗炎症作用、鎮痛作用、解熱作用の効果がある
薬剤の総称です。※1

しかし、ストレスによる腰痛の場合には、
違った薬を処方されることもあります。

それは、抗うつ薬や抗てんかん薬です。

うつ病の治療に使われ薬が、
腰痛の治療に使われることは、
以外と思われるかもしれませんが、
抗うつ薬には、
セロトニンやノルアドレナリンといった
神経伝達物質が細胞へ取り込まれることを阻害して、
痛みを感じにくくすることで、
鎮痛効果がみられたり、
抗てんかん薬によって、
神経細胞にある神経伝達物質の受容体と呼ばれる部位の
過剰な興奮を抑制することで、
鎮痛効果が期待できます。

ストレス性の腰痛には、
痛みについての誤った認識を修正する「認知療法」と、
痛みと行動の関係を知り、
日常生活でできることを増やしていく「行動療法」を
組み合わせた「認知行動療法」という、
心と体の両面から治療を行う方法があります。

※1:独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センターによる定義

痛みを予測することで痛みを治す–へ続く


知ってる?骨の新陳代謝

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骨ってどのくらいのペースで新しくなってるの?

ホネの新陳代謝は、細胞のそれと比べて幾分ペースが遅く、約4カ月かけて新しいものに生まれ変わると言われています。ちなみに、細胞は、1日約7000憶個が死につ生まれつを繰り返しており、身体を形成する細胞が入れ替わる為にかかる時間は、臓器等によって差がありますが、約2日から90日程度と言われています。
細胞の中で、最も新陳代謝に時間が掛かるものが骨細胞(約90日)で、これが行われる理由は、ホネの中に貯蔵されたカルシウムを溶かし、血液に混ぜて全身へ送る為です。そのため、ホネの健康を保つに際して、カルシウム摂取が重要とされるのです。

ホネには、自身の細胞を作り出す細胞(骨芽細胞)と破壊する細胞(破骨細胞)があり、この2種類の細胞が交互に活動する事で新陳代謝が行われ、全身のホネが作り変えられるまでに、約3年が掛かります。

骨粗鬆症と骨の代謝の関係性

骨粗鬆症とは、ホネの密度が下がり、骨折のリスクが高まる病気です。これは、ホネの新陳代謝を行う2種類の細胞(骨芽細胞と破骨細胞)の働きのバランスが崩れる事で発症すると考えられています。

ホネはカルシウムの貯蔵庫としての役割を持っており、これの新陳代謝は蓄えられたカルシウムを血液に溶かして全身に運ぶ目的があります。このカルシウムを溶かす働きが、(ホルモンバランスの乱れなどで)必要以上に働いてしまうと、ホネに蓄えられたカルシウムが余分に消費されてしまい、ホネ自体が脆くなってしまいます。これが骨粗鬆症です。つまりこの病気は、ホネの新陳代謝が正常に行われなくなる事で罹患する病気なのです。ちなみに、女性ホルモンは破骨細胞の働きを抑制する働きがあるとされており、女性ホルモンの投与が骨粗鬆症予防に効果的であるとされています。

カルシウムを多く摂取するには

カルシウムを多く摂取するには、食べ物・飲み物などから摂取するのが最も効果的でしょう。アレルギーなどの関係で、該当する食べ物を摂取する事が難しい場合は、サプリメントを使う事も1つの手段です。

骨粗鬆症の予防として有効な食品は、牛乳・ヨーグルトなどの乳製品を始め、豆腐などの大豆製品、小松菜・チンゲン菜などの葉物系野菜、ワカサギ・干しエビなど魚介類の一部が挙げられます。

また、カルシウムだけでなく、その吸収を手助けするビタミンDやマグネシウムを同時に摂る事も重要となります。ビタミンDは、日光に含まれている栄養素の為、日光浴をする事で補給が可能です。カルシウムは、元来吸収効率が悪い栄養素の為、単体摂取では十分な吸収ができません。よって、先述した別の栄養素と併用して摂る事が薦められます。

 


体に重要なカリウムって実際はなあに?

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カリウムって体でどういう働きをしているの?

カリウムの主な働きは、心筋に関係するものと言えます。心臓機能、心筋機能の調整を行い、血圧を調整する作用も持ちます。命に直結するとは言い過ぎかもしれませんが、それに準じるほどの重要性を持っている事は確かでしょう。

これとほぼ同じ働きをする栄養にナトリウムがあり、2つが協力し合って身体の健康を守ります。これら2つのバランスが、体内の浸透圧調節(水分調整)に作用します。他にも、神経細胞(膜)の刺激伝達、筋肉弛緩の調節、細胞のエネルギー生産に関わる作用、腎臓における老廃物の排泄を促す利尿作用など、実に様々な働きを持った非常に重要な役割の栄養です。

これが欠乏すると低カリウム血症となり、逆に過剰吸収(腎臓が弱い場合のみ)されると高カリウム血症になります。様々な役割を持っている為、減り過ぎても増え過ぎても、身体への影響が大きくなるのです。

カリウムが不足すると・・・

カリウム不足による症状の代表例として、不整脈・高血圧が上がります。先述した通り、心筋機能や血圧調整に大きな影響力を持っている栄養の為、欠乏時に最も症状が出やすい箇所もこれらになります。

他にも、筋肉の弛緩を調整する作用を持つ為、これが不足すると、こむらがえりや、(腸運動が弱くなる為)便秘になってしまいます。これらの症状は、全て「低カリウム血症」というれっきとした病気と捉えられます。また、夏バテもこれが一因となります。

カリウムが不足する要因として、ナトリウム(塩分)の過剰摂取・タバコ・アルコールなどの嗜好品や、ストレスなどがあります。また、これは水溶性ミネラルである為、水分と共に(汗のかき過ぎ・下痢など)失われてしまいます。これが夏バテの一因とされる所以です。夏など大量発汗が避けられない時期は特に注意が必要と言えるでしょう。

何を食べればカリウムを多く摂取できる?

カリウムを多く含んだ食べ物は、ジャガイモなどのイモ類・ナッツ類・野菜類(ほうれん草などの葉物がおすすめ)・海藻類などが挙げられます。これはミネラルの1種でもある為、ミネラルが多いとされる食べ物に多く含まれていると考えて良いでしょう(食べ物ではありませんが、ポカリスエットなどのスポーツ飲料にも多く含まれています)。他にも、アボガド・バナナなど果物も良いでしょう。ただし、リンゴなど含有量が低い物もある為、果物ならば良いという訳でもないので注意が必要です。

カリウムは熱に弱い栄養です。加熱調理でも失われる他、煮込み料理の場合は、3割ものカリウムがその食材から失われてしまいます。この為、効率良く摂取したいと思えば、生の果物やドライフルーツ・ピーナッツなどが適当と言えるでしょう。


日本料理と塩分量

高血圧の人は、
塩分を控えるようにすべきであるということは、
広く知られています。

海外でも高血圧の人は
塩分を控えるように
指導を受けますが、
特に日本食は、
塩分量の多い料理が多いため、
食事には、細やかな配慮が必要になります。

しおから、漬け物、ラーメン、そばなど、
その汁やスープには、
塩分が多く含まれています。

したがって、
料理はうす味にするなどの工夫が
大切になります。

「日本人の食事摂取基準(2005年版)」では、
成人が1日に摂る塩分の目標値は、
男性10g未満、女性8g未満となっています。

おおむね小さじ山盛り1杯の塩が10gですが、
1日3食で摂る塩の総量を計ることは、
現実的ではありません。

特に外食する際には、
その食べ物に含まれている塩の量を
知ることは大変難しいですから、
おおむねの塩分量を事前に知っておいて、
自分がどの程度、塩分を摂ったかを
知っておくことが肝心です。※1

また家庭では、
塩味の薄い食事に慣れることが大切です。

昆布やかつおぶしなど
うま味成分が多く含まれる調味料を上手に使うことで、
薄味でも風味豊かに、
おいしく食べることができます。

しょうゆやソースなどは、
料理にかけて食べるより、
つけて食べるほうが
塩分の摂取量を抑えられます。

和え物や焼き物に
レモン、すだち、かぼすなど、
柑橘類や酢を利用することも
減塩につながります。

※1 五訂 日本食品標準成分表より
天ぷらそば・山かけそば・月見そば     天ぷらそば     約6g
ざるそば     約3g
ラーメン     約4g
みそラーメン     約6g
カツ丼     約4.5g
天丼     約4g


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