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若さとは柔軟な発想

残酷ではありますが、
年を重ねるに連れ、若い時と比較すると
関節をスムーズに動かすためのヒアルロン酸や
お肌のハリや潤いに欠かせないコラーゲンが
ぐっと減ることは否めません。

加齢による外見の老いは、
仕方ないこととも言えますが、
内面の美という点では、
年令を重ねるに連れますます高まると
言っても良いでしょう。

常に新しいものに興味を持ち、
知識を吸収することで、
人間としての美しさが衰えることはありません。

逆転の発想というものも、
多くの経験を重ねることで湧き出してくるものです。

1991年(平成3年)9月28日、
青森県を風速50m以上の威力を持つ
台風19号が襲いました。

ちょうどリンゴが収穫される前であったため、
大きな被害が出ました。

この台風の影響で
収穫前のリンゴ9割が落ちました。

農業は常に自然との戦いであり、
自然災害を避けることはできません。

リンゴ農家の多くは肩を落とし、
被害額の大きさに落胆してしまいました。

しかし、
残った1割のリンゴに着目した人が、
起死回生のアイディアを出しました。

9割のリンゴは落ちてしまったが、
1割のリンゴは落ちなかった。

秋から冬にかけては、
来春の合格を目指す受験生にとって、
学力はもとより、
縁起担ぎさえも実力のうちです。

そこで猛烈な台風にも耐え忍び
落ちなかったリンゴを「落ちないリンゴ」と名付けて、
1個1000円で受験生を対象に売ったところ、
落ちないリンゴは、飛ぶように売れました。

このアイディアのおかげで、
台風被害の損失を補うことができました。

老いては子に従えという諺はありますが、
老いたる馬は道を忘れず(経験豊かな人は、判断が適切である。)の方が
言えて妙ではないでしょうか?


秋は炊き込みご飯

秋深まれば、
食欲とどまるところを知らず…。

秋に獲れる食材は、
調理されて食卓を賑わすと共に、
ご飯と一緒に炊き込むと、
いっそう美味しくいただけます。

いわゆる炊き込みご飯は、
塩やしょうゆで下味をつけ、
米と共に栗やキノコ、魚貝類などを加えて、
炊いたごはん料理です。

今では地方によって
様々な食材との組み合わせがある
炊き込みご飯ですが、
その歴史は、
奈良時代までさかのぼります。

炊き込みご飯は、
米の収穫がまだ十分でなかったころ、
米の量を節約するために、
色々な具を混ぜたことから始まります。

食事の量を増やすために用いれられた食材には、
あわや麦、ひえなどの雑穀、野草が
使われていたようです。

室町時代の頃になると、
料理の種類の一つとして、
食べられるようになります。

「変わり飯」と呼ばれるこの料理には、
くり、豆、野菜なども一緒に炊かれるようになりました。

様々な庶民文化が花開いた江戸時代では、
竹の子飯、えんどう飯、だいこん飯、ねぎ飯、
かき飯、かに飯、とり飯など種類が増え、
旬の食材をお米と一緒に炊きこんで、
味や季節感を楽しむ料理へと進化します。

アメリカやヨーロッパのように
小麦を主な穀物として食べている国々では、
バターライスやサフランライス、ピラフのように、
食材と混ぜあわせたお米料理は、
添え物として出されますが、
米が主食の日本では、
炊き込みご飯は、食卓の主役です。

少し贅沢して、
国産の松茸を使った炊き込みご飯を、
一年に一度は食べたいものです。


たまごの不思議

何気なく毎日食べている卵ですが、
不思議がある食材だということをご存知でしょうか?

進化の過程でニワトリが先に生まれたか、
卵が先かという話は置いて、
卵子と精子、
そして育つために必要な栄養(黄身)をセットし、
カルシウムを主成分とする硬い殻で包んで体外にポンと出す、
こんな奇想天外なアイデアによって生命を誕生させることは、
何ヶ月もの間、お腹の中で新しい命を育てる哺乳類にしてみれば、
ある意味うらやましいといえます。

同じ鳥類でありながら、
空を飛ぶ鳥とほとんど飛ばないニワトリでは、
卵の大きさが見た目は同じでも、
白身と黄身の割合が違っています。

鷲などの卵の卵黄の比率が20%であるのに対し、
ニワトリのヒナは、出来るだけ多くの栄養を確保し、
生まれた直後に立ち上がり、
自分で餌を食べ始めるように進化したため、
卵黄の割合が40%もあります。

卵の形が、
いわゆる卵型をしているのにも、
ちゃんと訳があります。

ゴルフボールのように真球だと、
どこかに転がっていく恐れがあります。

そこで上部と下部の直径を変え、
途中でクルリと輪を描くように止まる
デザインになっています。

また、
ゆで卵をコマのように回すと起き上がる現象は、
300年ほど前から世界の物理学者を悩ませてきた難問で、
「ゆで卵の逆説」と呼ばれていました。

しかし、
2002年慶応大学の下村裕教授らの研究グループが、
数式を使って「ゆで卵の逆説」を説明することに成功しています。

さらに2006年、同教授は、
横にしたゆで卵を水平方向に高速で回転させると、
卵が起き上がる過程で、
重力に反してほんの少しジャンプすることも
実験で証明しています。

たかが卵、されど卵というところでしょう。

ゆで卵を回して、ジャンプする瞬間を
観察してみてはいかがですか?


衣替えで気をつけたいこと

10月になって朝晩に肌寒さを感じると、
衣替えを本格的に行う決心がつきます。

タンスや収納ケース、あるいはクローゼットから
秋冬用の衣類を取り出すのは簡単ですが、
夏用の衣類を収納するのは気が重いという方は
少なくないはずです。

面倒臭さが先行して、
どーんと衣装ケースに放り込みたくなりますが、
来年のことを考えれば、
やはりちゃんとした収納を心掛けなければなりません。

収納する時に一番気をつけたいのが、
シミや虫食い対策です。

特に夏の衣類は、
充分に汚れを落として収納しなければ、
来年、フタを開けてみると取り返しの付かない状況が…、
ということにもなりかねません。

対策の第一としては、
汚れを落とした後、
よく乾燥させてから収納するという点でしょう。

虫食い対策としては、
防虫剤と一緒に保管するということになりますが、
気をつけなければならない点があります。

防虫剤の成分は空気より重いので、
上から下に広がります。

したがって、衣類を重ねて収納するのであれば、
衣類の上に置くのがベストです。

防虫効果を最大限にするのであれば、
詰め込み過ぎはよくありません。

ぎゅうぎゅう詰めの状態では、
防虫成分が行き渡りにくく、
効果も半減してしまいます。

タンスや収納ケースの8分目くらいまでを
目安にします。

吊り下げるタイプの防虫剤は、
防虫成分が空気中に蒸散するようになっていますので、
等間隔にかけると満遍なく広がり、効果的です。

長い間かけっぱなしの防虫剤は、
効力が無くなっているものもありますので、
使用し始めた日を防虫剤に記しておくと、
いつ使い始めたかがわかるので、
交換時期の目安になります。

衣類が完全に乾いていない状態で収納すると
カビの原因となってしまうので、
絶対にやめましょう。

クリーニング店から戻った衣類も、
スチームアイロンなどの湿気を含んでいる場合がありますので、
一度クリーング店でかけられたビニール袋をはずして陰干しした後に、
しっかり乾燥してから収納することにも心がけて下さい。


桐タンスは厄介者?

新築住宅への引っ越しの際に、
家具の持ち込みを減らすため、
ウォークインクローゼットや、収納スペースが
住宅設備として備え付けられている
規格住宅が増えたきました。

たしかに引っ越しで、
大きなタンスを持ち出し、
運び入れる作業は、
大人が二人がかりでやらないとできませんので、
備え付けの家具は、大変ありがたいものです。

嫁入り道具でいただいた桐のタンスも、
新しいデザインの家にはそぐわないということで、
廃棄処分にされたという話を聞けば心痛みます。

というのも桐のタンスには、
日本の風土に適合したすばらしさがあるからです。

まず桐の木は、
木質が非常に均一という特徴を持っています。

音響効果もよいため
楽器用の材料にも向いてます。

さらに、湿気に対する反応のきわめて早く、
かつ吸水率の非常に低い特性をもっています。

表面は 湿気や水分に敏感に反応しますが、
内部までには湿気が侵入しません。

着物や反物を守るために
桐タンスが使われる最大の理由です。

一番特徴的なのは、燃えにくいことです。

熱の伝導が遅いために全体的な発火が遅く、
実際の火事などで表面が炭化したにもかかわらず、
タンスの内部までは火が届いていなかったという事を
聞くこともあります。

最近のカラフルな家具の塗装面は、
石油系の塗料が使われていますので、
発火点が低く、
塗装面が燃えやすいです。

今の衣類の規格を考えると、
吊り下げるタイプのクローゼットが便利なのでしょうが、
衣類を守るという点では、
桐のタンスに勝るものは、
ほとんど見受けられません。

日本の風土にあった素晴らしい家具として、
大切に守り伝えていきたい逸品です。


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