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薬用植物が秘める未来への扉

南米は、トマトやジャガイモの原産地として知られていますが、
ジャトロファという植物のルーツでもあります。

ジャトロファ(正式名称はJatropha Curcas)は、
日本の生物学名ではナンヨウアブラギリと呼ばれ、
南米では昔からランプ用の油や薬として、
あるいは石鹸の原料として使われていました。

実には毒性の成分が含まれるため、
食べることは出来ませんが、
その特徴を利用して家々の塀に沿って植えられ、
動物による家屋への侵入を防ぐのに使われていました。

南米の家庭で、
ほそぼそと栽培されていたジャトロファに転機が訪れたのは、
16世紀以降です。

ポルトガル商人が、ジャトロファに含まれる薬としての効果に注目し、
アジアやアフリカにジャトロファを持ち込んで栽培し、
現地に定着させました。

アフリカでは、
作物を荒らすゾウの侵入を防ぐ垣根としても定着しました。

ジャトロファの実で作った薬用石鹸は、
皮膚トラブルなどに効能があります。

製造方法は、いたって簡単です。

ジャトロファの実を集め、外殻をむいて種を取り出します。

石臼などで種をすりつぶして、水と混ぜながら熱し、
ある程度熱を取り除いた後、形を整えて固めるだけです。

熱帯地方では成長が早く、約1年ほどで実をつけることも可能です。

ゴムの木栽培などと異なり、
栽培の早い段階で加工品を作ることができますから、
現金収入の少ない農村などの新たな財源に、
することが可能です。

しかし、ジャトロファが近年注目されている理由が、他にあります。

未来のエネルギー源として活用するための研究が、なされているのです。

-続く-


現代も進化する生物

かつて海で生まれた生命が、様々な進化の道を辿り、
陸上に進出し、様々な植物や動物に進化していったということを
学ばれたと思いますが、その進化は過去のものであり、
進化は既に完了したと思われている方も少なくありません。

しかし生物の進化は、科学が発達した現代であっても続いています。

そのような進化の手助けに人間が関わっている場合もあります。

品種改良がその一例でしょう。

たとえばトマトは、
南アメリカのアンデス山脈高原地帯が原産のナス科の植物です。

南アメリカに到達したスペイン人が、16世紀にヨーロッパに持ち帰り、
その後の品種改良によって、
現在では8000種類以上ものトマトが存在しています。

味や糖度が高く、収量が多いなど様々な特徴を持つ
トマトが登場しています。

遺伝子が直接にコントロールされた品種も登場しています。

しかし品種改良のトマトとは全く違った経過で生まれるトマトもあります。

それは突然変異です。

無数の数字のあるサイコロのようなもので、
どのようなものが出るかはわかりませんから、
人間にとってメリットのない想定外のトマトもあります。

どこにでもある普通のトマト畑から、
限りなくゼロに近い確率ではありますが、
未来を切り開くトマトが現われます。

害虫に強く、収穫量が多く、
痩せた乾燥した土地でも元気に育つ自然が生み出す
ハイブリッドの品種です。

そのような作物を環境適用種といいます。

いつどこで登場するかは誰にも分かりませんが、
トマト畑のどこかで見つけられる日を待っています。


フラダンスで旅気分ダイエット

ゴールデンウィーク中に出国する日本人は、
140万人を超えると言われています。(2012年総務省統計局)

国内旅行と同じくらいの費用で利用できる海外ツアーもあるため、
数日間を一足早い夏のリゾート地で過ごす人も少なくありません。

人気の観光地は数多くありますが、その中でもハワイは、
常にベスト10にランクインしています。

アメリカ合衆国の50番目の州に認められたのは、1959年のことです。

その後、常夏のリゾート地として瞬く間に観光地として開発され、
世界中から旅行者が訪れるようになりました。

かつて、人知れず広大な太平洋の真ん中にぽつんと位置するハワイは、
太平洋の民であるポリネシア人が、伝統を守りつつ穏やかな生活を営んでいました。

しかし、1778年にジェームズ・クックが発見された後は、
島の外から様々な文化や物が持ち込まれ、
国の形が次々と変わりながら、
近代化の波へ飲み込まれることとなります。

しかし民族の文化は、形を変えながらも受け継がれています。

そのハワイ文化の代表といえば、フラダンスでしょう。

「フラ」とは、ハワイ語では、ダンスという意味で、
日本であれば「能楽」といった存在です。

ハワイでは、海・山・太陽などすべてに神が存在すると信じられ、
文字を持たなかったハワイの人々は、
その精神をダンスで表現し伝承してきました。

映画「フラガール」をはじめ、
ハワイを取り上げたテレビの旅番組で、フラダンスはよく紹介されるため、
日本でも、若年から年配者まで多くの人たちに知られています。

長い歴史を持つフラダンスは、
神々に感謝し、崇め讃える気持ちを、指使いや体の動きで表現するため、
その優雅な魅力に惹かれて、趣味で踊る人達が世界中に数多くいます。

日本でも、競技会形式のコンペティションが開かれるほどの人気があります。

フラダンスの動きはゆったりしていて楽なように見えますが、
太極拳のように四肢に神経を集中し、体全体を使う有酸素運動であるため、
ダイエットを目的とした人たちも、フラダンスを取り入れています。

美しいコスチュームでしなやかに踊りながら、
下半身の筋力アップと脂肪燃焼も期待できるフラダンスは、
心と体を綺麗にする異文化体験と言えるでしょう。


健やかなご近所関係の秘訣

人間は、動物の中でも仲間同士での協調性や
他人を思いやる道徳という意識を持っている
唯一の霊長類であると考えられています。

しかし、オランダの動物行動学者フランス・ドゥ・ヴァールは、
チンパンジーを使って、
相手を思いやる能力が人間以外にもあることを実証しました。

その実験とは、日頃は屋外飼育されているチンパンジー2匹を、
実験室の並べたオリに入れ、
片方のチンパンジーにだけ餌を与えます。

餌やりにはルールがあり、オリの中にある緑と赤の筒を、
飼育員に渡すと餌をもらえるというものです。

赤の筒を渡せば、自分だけがエサをもらえます。

緑の筒を渡すと、自分と隣のオリにいる
チンパンジーの双方がエサをもらえます。

筒を選ぶチンパンジーにとって、
赤、緑いずれの筒を渡しても、自分はエサをもらえますが、
緑を選べば、仲間も餌を手に入れることができます。

つまり他者の幸せを思いやれるということになります。

実験の結果、チンパンジーは仲間も餌を手に入れることができる
緑の筒を意図的に選ぶことが明らかになりました。

さらに研究を進めると、仲の良いお隣同士は、
緑の筒を選ぶ頻度が高まり、逆に威嚇するお隣さんに対しては、
その頻度が下がるということです。

まるで私達の周辺にも出てきそうな状況です。

この実験結果には、ご近所さんが気持ち良く暮らすための示唆に富んでいると言えるでしょう。


植物がいらないもの人がいるもの

地球が誕生したのは、およそ46億年前と言われています。

この太陽系の第三惑星は、水で満たされ、太陽系の惑星の中では、
生命という奇跡が発生した唯一の星です。

原始の海から誕生した命の系図は、様々な進化を遂げ、
動物や植物へと姿を変えていきました。

地球という星で生きるために、それぞれの生物は様々な物質を
共用したり、あるいはお互いが不必要として外に排出したものを
再利用するという、微妙なバランスを保ちながら生き延びています。

そのつながりの一つが酸素です。

私達にとって文字通り、酸素なしで生きていけませんが、
その貴重な酸素は、植物にとっては捨てられたものであることを
実感することはあまりありません。

ご存知のように、植物は太陽の光を利用し、二酸化炭素と水から
デンプンなどの有機物を作り、酸素を排出します。

動物にとっては呼吸の際に吐き出す不要な二酸化炭素を、
植物が養分生産の原料とすることは、動物と植物が共に地球で生きている
ということの証です。

お互いが、かけがえのない地球という宇宙船の乗組員であることを
心から理解することができる事実です。

太陽の光というエネルギーがあることで、光合成というシステムが機能し、
デンプンという生産物を作り、廃棄物である酸素を捨ててくれるおかげで、
動物は命を維持することができるのですから、その代表格である人間は、
植物が生きやすい環境を、心して守らなければなりません。

植物が生きやすいということは、動物が棲みやすいということに繋がるのです。

ところで、

太陽が沈むと植物は光合成を止めますから、デンプン生産のための
二酸化炭素は不必要となります。

逆に夕方になると、個人的には二酸化炭素が少々必要となります。

酵母菌の醗酵によって二酸化炭素が溶け込んだビールを
飲まなければならないからです…。


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