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黄葉の薬用

2014年もあと1ヶ月を残すところとなりました。

街路樹のイチョウも、
すっかり色づき、
公園や歩道を黄色に染めています。

このイチョウという木は
生きた化石と呼ばれているシーラカンスと
同じくらい古くから地球上に存在している
木であることをご存知でしょうか?

イチョウは、
2億4千年前の中生代から
すでに繁栄していた植物です。

当時は、
10種類以上のイチョウが
地球上で大森林を形成していましたが、
中生代の末期の恐竜の絶滅と同じく、
多くのイチョウ科は絶滅し、
現在のイチョウ一種のみが、
中国に残りました。

宋代の中国では、
ギンナンの実が珍重されたことによって、
宮廷の庭や豪族の屋敷で好んで植えられ、
広まっていきます。

日本では遅くとも室町時代に、
中国から持ち込まれたイチョウが
各地の寺や神社に植えられていたようです。

ギンナンの木が大切にされたのは、
実が食用として珍重されたばかりではなく、
葉が、漢方の薬としても珍重されたからです。

現代でも欧米において、
脳血流を増大させる効果や、
記憶力の回復や痴呆症の治療に効果があると
注目されている植物でもあります。

イチョウは、
日本ではギンナンを茶碗蒸しや
炊き合わせの食材として利用しますが、
世界では、
イチョウ葉エキス製剤として
アルツハイマー痴呆症の治療などに
活用されている貴重な植物です。


たまごの不思議

何気なく毎日食べている卵ですが、
不思議がある食材だということをご存知でしょうか?

進化の過程でニワトリが先に生まれたか、
卵が先かという話は置いて、
卵子と精子、
そして育つために必要な栄養(黄身)をセットし、
カルシウムを主成分とする硬い殻で包んで体外にポンと出す、
こんな奇想天外なアイデアによって生命を誕生させることは、
何ヶ月もの間、お腹の中で新しい命を育てる哺乳類にしてみれば、
ある意味うらやましいといえます。

同じ鳥類でありながら、
空を飛ぶ鳥とほとんど飛ばないニワトリでは、
卵の大きさが見た目は同じでも、
白身と黄身の割合が違っています。

鷲などの卵の卵黄の比率が20%であるのに対し、
ニワトリのヒナは、出来るだけ多くの栄養を確保し、
生まれた直後に立ち上がり、
自分で餌を食べ始めるように進化したため、
卵黄の割合が40%もあります。

卵の形が、
いわゆる卵型をしているのにも、
ちゃんと訳があります。

ゴルフボールのように真球だと、
どこかに転がっていく恐れがあります。

そこで上部と下部の直径を変え、
途中でクルリと輪を描くように止まる
デザインになっています。

また、
ゆで卵をコマのように回すと起き上がる現象は、
300年ほど前から世界の物理学者を悩ませてきた難問で、
「ゆで卵の逆説」と呼ばれていました。

しかし、
2002年慶応大学の下村裕教授らの研究グループが、
数式を使って「ゆで卵の逆説」を説明することに成功しています。

さらに2006年、同教授は、
横にしたゆで卵を水平方向に高速で回転させると、
卵が起き上がる過程で、
重力に反してほんの少しジャンプすることも
実験で証明しています。

たかが卵、されど卵というところでしょう。

ゆで卵を回して、ジャンプする瞬間を
観察してみてはいかがですか?


ウィーンの音楽の殿堂

ここ数日、朝夕の気温は、
すっかり秋めいてきたようです。

8月の終わりは、夏休みの終わりであり、
季節の上でも一区切りということになるのでしょう。

残暑はまだ覚悟しなければならないでしょうが、
秋を迎える楽しみはもう始まっています。

秋といえば、様々な文化的な行事が世界中で開かれます。

収穫の秋でもありますから、
楽しみ満載の季節です。

言わずと知れた音楽の都ウィーンでも、
続々とクラッシックコンサートが開催されます。

その中でもウィーン楽友協会(Wiener Musikverein)の
黄金ホール(Goldener Saal)で開かれる
「ディライトフル・ウィーン」は、
大変由緒ある人気のコンサートです。

世界的には、
ウィーンオペラハウスの方が有名ですが、
ウィーン楽友協会は、客席は少ないものの、
ここを本境地とする
ウィーン・モーツァルト・オーケストラの演奏は、
世界屈指と評されています。

「ディライトフル・ウィーン」のコンサートは、
楽団員が歴史的な衣装やウィッグを着用するなど、
特別な雰囲気を持つコンサートでもあります。

このホールの歴史は古く、
1870年に完成しています。

注目すべきは、
音楽ホールばかりではありません。

緋色のカーペットが敷かれているエントランスからフロント、
そしてゆるやかに続く回り階段を登れば、
マリア・テレジアが栄華を誇ったハプスブルグ家全盛の時代へと
タイムスリップできそうです。

毎年元旦に全世界にテレビ中継される、
ニューイヤーコンサートが開催されるのは、
ウィーン楽友協会の黄金ホールです。

輝く黄金のカリアティード(建物の梁を支える女人柱)や、
楽器の音が理想的に響くように設計されたホールは、
音楽のためだけに創られた音の殿堂といえるでしょう。


水を守る大切な植物

気温が高くなるこの時期には、
驚くほどの勢いで植物が成長します。

太陽の強烈な光を利用することで、
植物は、成長に必要な栄養を生産し、
その副産物である酸素を排出します。

動物にとって生命の維持になくてはならない酸素を
創りだしてくれる有り難い植物ですが、
それと同じくらい水の浄化に貢献していることを
ご存じの方はどのくらいいらっしゃるでしょうか?

たとえば森の木々たちは、
動物にとっては汚染された物質である
栄養塩類を分解吸収し、
多量の水とともに貯蔵します。

また落ち葉などの腐敗物を栄養とする
細菌やキノコもまた水の浄化に寄与しています。

川沿いに繁るヨシが持つ水の浄化能力については、
ご存知の方も多いはずです。

生活排水による汚染が深刻な千葉県の手賀沼の水を使って、
東京のテレビ局がヨシの浄化能力の調査をした結果、
ヨシが生えている場所の土と何も生えていない場所の土では、
ヨシが生えている土の方が水の透明度を高め、
濾過した水に含まれている窒素、リンの含有量を
低くすることが明らかになりました。

ヨシは成長が早いため、
水の中の土や水から窒素とリンをより多く吸収するためです。

またヨシは塩分に強い植物です。

潮の満ち引きによって海水が入っている場所でも、
地下茎に塩分を溜めて生育できます。

私たちが植物を守ることは、
私たちの生きる環境を守ることと直結しているといえます。

庭や畑に活きよいよく繁る雑草には手を焼きますが、
地球全体で考えると、
かけがえのない命の連鎖を支える
大切な資源ともいえそうです。


地球を救うエネルギーの種

南米原産のジャトロファは、
ランプ用の油や薬用石鹸の原料として利用されていますが、
近年では、エンジンや発電機用バイオディーゼル燃料の研究が
世界各地で進められています。

ご存知のように産業革命以降、
石油や石炭などの化石燃料が盛んに使われるようになり、
空気中の二酸化炭素の濃度が急激に上昇しています。

温室効果により地上の平均温度が上昇し、
それが原因と考えられる異常気象が、
世界各地で発生しています。

そこで化石燃料に代わるエネルギーのひとつとして、
ジャトロファの油を使うことが出来ないかという研究が
注目されています。

もともとジャトロファは、原産地の南米でも、
種子を絞ってランプ用の油として利用していました。

第二次世界大戦中の日本軍も
ジャトロファの油に注目をしていました。

戦況が悪化する中、戦闘機用の燃料として
ジャトロファの絞り油を利用できないか検討するため、
当時占領下にあったインドネシアや台湾に
ジャトロファを植えました。

戦闘機の燃料として使ったかの記録は残っていませんが、
戦後も成長が早いジャトロファは、
そのままインドネシアで分布を広げました。

ジャトロファは早熟なだけでなく、
成長後約50年に渡って実をつけるため、
バイオエネルギーの植物資源として
安定的に利用することが可能です。

植物であるジャトロファは、
大気中の二酸化炭素を吸収し、
光合成によって養分を作り、
種子にその養分を蓄えます。

したがってジャトロファの種子油が、
燃料として使用され、
二酸化炭素を排出したとしても、
空気中の二酸化炭素の量は、
ほぼプラスマイナスゼロとなります。

例えば石油から生成されるディーゼル燃料を
ジャトロファ油から生成したバイオディーゼル燃料に
置き換えることが出来れば、
大気中の二酸化炭素の増加を防ぐことができ、
温暖化対策へもつながることが期待されます。

小さな植物の種に、
地球の危機を救う可能性が秘められています。


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