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新米を味わう前に

「秋は…、」という枕詞で、
まず思い浮かぶのは、
「実りの秋」ではないでしょうか?

特に日本の場合、
米を主食とする歴史が、
数千年の永きにわたって続いています。

そのため、ほとんどの祭事は
お米作りと強く結びついています。

お米作りは、啓蟄(けいちつ)頃、
春まだ浅い頃から始まります。

水温む前からよく耕し、
肥料を入れて、
早苗を育てる準備を整えます。

代掻き(しろかき)が終わった田に、
整然と植えられた苗が並んでいる様子は、
桜の花と同様に、
日本人の春の風景と言えます。

苗の成長には、
水の管理が大切です。

水が少なければ根は枯れ、
水が多過ぎれば根は腐る、
長年の経験が必要な仕事です。

また、根をよく張らせるためには、
過不足なく肥料を施し、
病害虫の駆除から畦の雑草刈りにも
気を配らなければなりません。

収穫の時期が近づけば、
気象図を見ながら稲刈りに適した日を
予想します。

田に引く水路を整備する土木技師であり、
機械の手入れができる整備士であり、
稲を観察する植物学者であると同時に、
先の天気を見極める気象予報士でもあります。

美味しいお米を作るためには、
百の仕事をこなさなければなりません。

農家が百姓と呼ばれる所以です。

新米が出回るこれからの時期、
厳しい自然と向き合い、
よく育ててくれたお百姓さんに
思いを馳せて食すれば、
お米は、「格別の秋のごちそう」
と言えるのではないでしょうか。


中秋の名月の団子とは?

今年の夏は、気圧配置の影響で雨が多く、
日本各地で水の災害が多い年でした。

いまだ復旧作業が続く被災地もあり心痛みます。

早く元の生活に戻れることを願うばかりです。

9月に入り少しはスッキリした晴れの日が
やってくるかと思っていましたが、
まだ雨の多い洗濯物の乾かない日々が、
続いています。

それでも夜に聞こえる虫の声が
秋の入口に向かっていることを、
知らせています。

古(いにしえ)の日本人は、
9月のことを長月(ながつき)と呼んでいました。

秋を迎える頃、日の入りの時刻が早くなって、
次第に夜が長くなり、夜長月(よながつき)が略されて、
長月となったと伝えられています。

夏と比べると秋は、気温、湿度も共に低くなるため、
月を見るには最適です。

日本のような農耕民族にとって、
規則的に満ち欠けをする月は、
古来から、暦(こよみ)として重宝されてきました。

田に植える早苗の準備や稲刈りの目安も、
月の巡りを頼りにしてきました。

旧暦の8月15日(中秋の名月)の夜に、
このように農耕に役立つお月様に感謝の意を込めて、
収穫した農作物やお団子をお供えするようになりました。

今年(2014年)の中秋の名月は、9月8日(月曜日)です。

きっと綺麗な月が見えるよう、
少し早めにお月様にお願いします。


美人の湯の正体

環境省が発表した温泉地の数(2012年)は、
およそ3,000カ所と発表されています。

温泉の数は、都道県の温泉台帳の登録され、
そのデータは、環境省に温泉の戸籍として、
統計的にまとめられています。

昭和37年から統計が開始されて以来、
およそ50年の間に2倍に増えています。

突然温泉が湧き出したといった夢の様な話はほとんどなく、
ボーリングによって、温泉の数が増えた
というのが実際のようです。

逆に考えると、それだけ日本人には、
温泉を求める執念があるということなのかもしれません。

別府のように湧出量が豊富な温泉地であれば、
毎日温泉を利用することもできるのでしょうが、
ほとんどの家庭では、自分の家のお風呂に入ります。

自宅で温泉気分を味わいたいという人は、
温泉の成分が配合された入浴剤をお風呂に入れるなどして、
楽しみます。

伊豆の湯、箱根の湯など有名な温泉地のラベルに惹かれますが、
特に女性の方であれば、美人の湯と付けられた入浴剤は、
かなり魅力的です。

では、美人の湯の条件とはどのようなことでしょうか?

美人の湯といわれる温泉は、肌の老廃物を洗い流し、
湯上りのお肌はしっとりでスベスベということが基本です。

そのような効果が期待できる温泉のほとんどは、
重曹泉(炭酸水素物泉Ⅱ・Na炭酸水素物泉)です。

地下から湧出するときは必ずしもアルカリ性ではありませんが、
地熱で沸騰されると、溶けている炭酸ガスが放出され、
お湯自体はアルカリ性を示します。

血行を促進して血管を拡張する、
また皮膚の表面を柔らかくする効能があります。

重曹といえば、
キッチンの万能洗剤である重曹を思い出しますが、
その正体は「炭酸水素ナトリウム」、
「ナトリウム炭酸水素塩」で、重曹泉の主成分と同じものです。

重曹は非常に弱いアルカリ性に分類され、
少し触ったくらいで大事にはなりません。

ベーキングパウダーとしてケーキ用に使用されていますし、
歯磨きに利用する方や、
胃薬として利用している方もいます。

もちろん入れ過ぎは禁物ですが、
重曹を一握りほどお風呂に入れれば、
気軽に美人の湯を体験できます。


そうめんのなるほどメモ

お盆の時期は、
日本独特の暑さと湿度の高さが相まって、
健康な人でも食欲が減退するものです。

そんな時でも冷やしそうめんであれば、
なんとか食べられるという人も少なくありません。

冷たい氷を浮かべたガラスの器に盛られたそうめんは、
味覚ばかりでなく視覚からもひんやり感を楽しめる、
数少ない食べ物です。

ところで、そうめんと似たような麺類に冷や麦がありますが、
そうめんと冷や麦の違いをご存知でしょうか。

その違いで真っ先に思い浮かぶのが、
麺の太さだと思います。

実は、JAS規格(日本農林規格:※1)によって、規定されています。

■乾麺の太さの定義
そうめん:直径1.3mm未満
冷や麦:直径1.3mm以上1.7mm未満

ちなみに1.7mm以上になると、
冷や麦ではなく、うどんになります。

太いのが「冷や麦」、細いのが「そうめん」ということです。

一方、国語辞典(広辞苑)を紐解いてみると、
つぎのように記述してあります。

「そうめん」:小麦粉に食塩水を加えてこね、
これに植物油を塗って細く引き伸ばし、
日光にさらして乾かした食品。
ゆで、または煮込んで食す。

「冷や麦」:細打ちにしたうどんをゆでて冷水でひやし、
汁をつけて食べるもの。

「うどん」:小麦粉に少量の塩を加え、
水でこねて薄くのばし、細く切ったもの。
ゆでて汁にひたして食べる。

とあります。

いずれにしても、
伝統的な食品であるそうめんは、
日本特有の気候によって生まれた
先人たちの知恵と言えます。

※1JAS(Japanese Agricultural Standard)規格とは、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法、1950年公布)に基づく、農・林・水・畜産物およびその加工品の品質保証の規格です。


だいずはだいじ

ビールのおつまみの定番といえば、
やはり枝豆でしょう。

暑いこの時期に居酒屋の
のれんをくぐったお父さんの決まり文句は、
「とりあえず生ビールと枝豆」です。

もちろん自宅でも、茹でたての枝豆は、
老若男女のサブメニューとして
不動の位置にあります。

既に江戸時代の中期には、
枝豆売りが街中で商いをしているという
記述があるほど、伝統ある食べ方です。

しかし、
完熟していない大豆を食べるという食文化は、
最近までは、アジア諸国独自のものでした。

アメリカのJohn Wiley & Sons社が、
1991年に出版したNew Cropsには、
「EDAMAME」がアジア固有の新しい食物として
紹介されています。

ということは、
少なくともこの本が出版される時期までは、
欧米では「枝豆」はほとんど知られていなかったと
考えてもよいでしょう。

世界広しといえども、
日本ほど枝豆をはじめ、
豆腐、味噌、醤油、納豆、ゆば、きな粉など、
大豆を様々に加工して
日々の食生活に活用している国はないでしょう。

大豆は豆類の中でも栄養価が高く、
タンパク質の含有量も多いため、
「畑の肉」とも称されます。

しかも大豆タンパクは、
LDLコレステロール値(※1)を低下させ、血圧を下げます。

レシチンは、善玉のHDLコレステロール(※2)を増やして、
悪玉のLDLコレステロールを減らし、
中性脂肪も減少させます。

ポリフェノールの一種であるイソフラボンには、
強力な抗酸化作用があります。

またビタミンB1、B2、Eなどが豊富で、
カルシウム、カリウム、鉄も多く含む、健康食品の王様です。

ムシムシとした暑い時期には、
大豆をしっかり摂って、夏バテに対抗しましょう。

※1:LDLコレステロール
LDLコレステロールが140mg/dlの基準値を超えると、
高コレステロール値です。
動脈硬化や心筋梗塞の危険性が高まります。

※2:HDLコレステロール
血管内の壁に付着したLDLコレステロールを引き抜いて、
肝臓まで運ぶ働きをしています。
HDLコレステロールは「善玉コレステロール」と呼ばれています。


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