打ち水の活用
焼け石に水ということわざがあります。
熱くなった石にわずかな水をかけたとしても、
水はすぐに蒸発してしまう。
つまり問題解決のためのわずかな努力では、
効果はあまり期待できないという意味です。
ここ数日のカンカン照りは、この表現そのものです。
夏の暑い日差しのために
アッチッチに焼けた地面に水をかけても、
効果があるようにも思えませんが、
それでも何かしら手立てはあります。
その一つが「打ち水」です。
打ち水は、江戸時代の頃から庶民の間に浸透したと伝えられている
暑さを和らげるひとつの方法です。
本来の「打ち水」とは、
お客様を迎えるために場を清めるという意味でしたが、
夏の打ち水は、文字通り、
水をまくことで、地表から蒸発する際の気化熱の原理(※1)を
経験的に利用して涼しくする暮らしの知恵です。
水は蒸発するために、熱が必要です。
液体の状態の水が蒸発して気体の水蒸気になる際に、
周りから熱を奪い取ります。
皮膚を擦りむいた場合に、
消毒のためにアルコール綿で
肌の表面を拭くとその部分がひんやりします。
液体のアルコールが気体のアルコールに変化して
蒸発する際にヒンヤリする感じと同じです。
ただし、やみくもに水をまけば良いというわけでもありません、
真上から太陽が照らす昼間でも、
あるいは日の出、日の入りの頃でも、
原理として同様に温度は下がりますが、
体感的に涼しさを感じるのは、
日が昇り気温がぐっと上昇する午前中や、
日が沈んで暗くなる頃です。
ゆっくりと蒸発すれば、
涼しさを長く感じることができますから、
窓辺のプランターや庭の花壇に打ち水をして、
植物が吸い上げた水をゆっくりと蒸散するのを
利用するという方法もあります。
また、窓に取り付けてあるすだれや家の壁に
打ち水するのもそのひとつです。
※1:気化熱の原理
気化熱とは1gの水(液体)を全部気体にするために
必要な熱量のことです。
気化熱は気温によって異なります。
水の場合、
1気圧で100℃のときの気化熱は539cal/g、
20℃では586cal/g、
0℃では596cal/g
の熱量を必要とします。