ミトコンドリア・イブ
アメリカ合衆国の国勢調査局と国連データから推計すると、
2015年9月1日現在の世界の総人口は、
およそ72億7650万人と考えられます。
現在の情勢では1年間で7千万人が
増えるという試算も出されています。
人口増加によってその人達の生命を守るための食料を
どのように確保できるかについては、
別のタイトルとしてお話しするにしても、
今回は時間を逆上る話です。
人口が増えるという事実を裏返してみると、
時間を逆上ることで人口は少なくなります。
例えれば、8人の玄孫(やしゃご)は、
4人の孫から生まれ、
その孫は2人の子供から生まれ、
その子供は1人の母から生まれたというようなお話です。
もちろん、子供を生むための夫は存在するのですが、
いずれにしてもこの数式をどんどん逆上ると最後には、
1人の母に辿り着くということになります。
旧約聖書の『創世記』に記された、
最初の人間であり、母でもあるイブです。
イギリスの遺伝子研究者であるブライアン・サイクスは、
ヒトの遺伝子の中にあるミトコンドリア(※1)のDNAが、
母親を通してのみ遺伝することに着目し、
このミトコンドリア遺伝子を追跡することで、
地球上の母達の血筋を逆上る研究を行ないました。
その結果、現在の世界中の民は、
たった一人の共通の母=ミトコンドリア・イブに
つながるという考えに至ります。(※2)
この学説を認めるか否かは、
哲学的な要因も関わるため、
賛否両論別れるのでしょう。
しかし、人類は皆兄弟であるのだから、
皆は仲良くしようという考えは、大いに腑に落ちます。
※1 ミトコンドリア
人の細胞に含まれる構造物のひとつで、
細胞の中で呼吸をしてエネルギーを生産しています。
ミトコンドリアは一つの細胞に数十から数万という
大変な数が含まれています。
ミトコンドリアが、血液によって体内の細胞に運ばれた酸素を使って
糖や脂肪を燃やすことで、ヒトは体温を保ち、活動ができます。
※2 参考資料:イヴの七人の娘たち (ヴィレッジブックス N サ 1-1)
世界中の人々は、共通のDNAでつながった近い関係で、
人々をつなぐ遺伝子の絆があきらかになれば、
民族差別や偏見、争いや攻撃をなくすことができる
という考えが述べられている科学系ノンフィクションです。