ミツバチを探偵する-その壱-

世界の各地で民間伝承薬として利用されているプロポリスには、
抗菌作用、抗ウィルス作用、抗炎症作用、抗腫瘍作用など
多くの薬理学的な効果があることが報告されています。

研究初期の段階では、プロポリスは巣の補強や修理の材料的な用途として
使われていると考えられていました。

しかし、雑菌の繁殖を抑える生化学的な用途としても
利用していることが明らかになってくると、
プロポリスは、にわかに健康食品の素材として見直されます。

プロポリスの主な成分は、樹脂や花粉、ろう質ですが、
世界各地の植生は同じではありません。

そこでセイヨウミツバチ(以下ミツバチ)は、自分たちが暮らす環境の中から
プロポリスを作るのに適した植物を探すことになります。

ミツバチがプロポリスの原料として集めてくる植物を
「起源植物」と呼びます。

代表的なプロポリスの起源植物は、
ポプラとパッカリス・ドラクンクリフォリアです。

ヨーロッパを中心に古くから利用されているプロポリスは、
ポプラが起源植物です。

ミツバチはポプラの新芽から出る粘性の高い樹液を集めて巣に持ち帰り、
ポリフェノールの一種で、強力な抗酸化作用を持つフラボノイドを
多く含むプロポリスを作ります。

一方、ブラジル南東部のミナス・ジエライス州一帯に生息しているミツバチは、
パッカリス・ドラクンクリフォリアを起源植物としています。

ブラジル産プロポリスに含まれる成分はフラボノイドではなく
桂皮酸誘導体やテルペノイドなどが多く含まれています。

ヨーロッパ産とブラジル産では、組成は大きく異なっていますが、
抗菌性という点では共通しています。

ミツバチたちは、自分たちを守る起源植物をそれぞれの生息域で
本能的に探し当てています。

日本に生息するミツバチもまた、プロポリスを作るための
起源植物を見つけています。

特に沖縄に棲むミツバチが利用している起源植物が
面白いことになっています。

-続く-


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