梅の花と日本人

梅が開花したという便りが
あちらこちらから届く時期になりました。

梅と言えば、
『梅一輪、一輪ほどのあたたかさ』という
有名な俳句があります。

これは、江戸時代、
芭蕉の弟子の服部嵐雪が詠んだ句で、
2つの解釈があるとされています。

一つは、
「梅が一輪、また一輪と咲いていくにつれて、
暖かさが増し、春に近づいている。」というものです。

もう一つは、
「梅が一輪咲くと、ほんのわずかではあるけれども、
その一輪ほどの温かさを感じる。」というものです。

冬のそれと比べると
格段に明るくなった日の光に、
確かに春の訪れは感じられるものの、
まだまだ風は冷たく、
マフラー、手袋を手放せない。

そんな早春の頃にふさわしい句ではないでしょうか。

迫り来る春を迎る期待感は、
その前の冬の季節が、
寒く厳しいものであればあるほど、
大きいものです。

梅一輪にさえも、
暖かさを感じのは、
きっとその厳しい冬の寒さを
ひたすら耐えていたからこそでしょう。

梅は、中国が原産で、
日本に伝えられたのは、
奈良時代です。

現代は、日本の花と言えば桜を指しますが、
平安時代以前は桜の花よりも
梅の花の方が愛でられていました。

お雛様飾りの原型とされる
平安京・紫宸殿の「左近の桜」も、
もとは、梅の花だったと言われています。

早春に薫り高く凛と咲き、
長い期間人々を楽しませる梅の花。

一斉に花開く絢爛豪華さと
その散り際の潔さで魅了する桜の花。

何かと比較される2つの花ですが、
昔から春を告げる花として、
日本人に愛されてきたことには、
変わりないでしょう。


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